10コアオーバーで高いスペックを持つAMD Ryzen 9シリーズ。第10世代Coreの「Core i9-10900K」でインテルも10コア/20スレッドに達したが、パフォーマンスをはじめ、導入コストやプラットフォームの将来性など、オススメ度は依然として12コア/24スレッドを6万円で実現している「Ryzen 9 3900XT」の方が上と言える。
コスパが良く、ハイスペックなクリエイティブ/ゲーミングPCを組める優良CPUのRyzen 9 3900XTだが、24スレッドだけあって発熱もそれなりにあり、CPUクーラーも標準で付属していないため、CPUクーラー選びは快適なマシンを組む上で重要なポイントになってくる。
ここでは20スレッドオーバーのRyzen 9 3900XTをしっかり冷却でき、その性能を最大限引き出せるおすすめの空冷CPUクーラーを紹介しよう。

今年新たに投入されたクロックアップモデルのRyzen 9 3900XT。CPUクーラー選びがマストだ

記事執筆時、Ryzen 9 3900XTは下位モデルとなるRyzen 9 3900と同価格帯になっていた
5000円台の定番からPCを彩るLED搭載製品、
デュアルファンまでおすすめ4種類
TDP105WのRyzen 9 3900XTにベストな1台として、数あるCPUクーラーのなかから4製品をチョイス。コスパやLEDイルミネーションでのライティング、大型ヒートシンク&デュアルファンによる冷却性能などを考慮して製品を選出した。それぞれの特徴やおすすめ理由とともに、各製品を使用した際のRyzen 9 3900XTの温度や、動作音を検証していこう。
テストするにあたって、X570チップセットを採用したMSI製マザーボード「MEG X570 UNIFY」や、SAPPHIRE「SAPPHIRE PULSE RADEON RX 5700 8G」などを用意し、バラック状態でPC環境を構築。CPUの性能をフルに引き出すため、CPU温度を測るには最適な作業として無料のエンコードソフトウェア「HandBrake」で、約5分間の4K解像度のmp4動画をフルHD(H.265 10bit)で出力した際のCPU温度と、騒音値を計測している。
CPU温度は「HWiNFO64」でモニタリングした「CPU (Tctl/Tdie)」とし、処理に要した約5分間の平均温度と最大温度を抽出している。騒音値は処理開始から2分経過後に、CPUクーラーファンの排気側となるマザーボードのリアインターフェースから約30センチ離れた位置で測定している(暗騒音値33dBA前後)。
なお、冷却性能に影響するグリスには、親和産業「OC Master SMZ-01R」を使い、グリスの塗布には親和産業が販売している「プラチナ塗名人キット for AM4 & LGA20XX(SMZ-TIMKIT-02P)」を使用した。
テスト機の主なスペック | |
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CPU | AMD Ryzen 9 3900XT (12コア/24スレッド、3.8GHz〜4.7GHz) |
マザーボード | MSI「MEG X570 UNIFY」 (AMD X570、ATX) |
メモリー | G.Skill「F4-3200C16D-32GTZN」 (DDR4-3200 16GB×2枚) |
ビデオカード | SAPPHIRE「PULSE RADEON RX 5700 8G」 (Radeon RX 5700、GDDR6 8GB) |
SSD | Western Digital「WD Blue SN550 NVMe 1TB」 (NVMe M.2、1TB) |
電源ユニット | Seasonic「FOCUS-GX-750」 (80PLUS GOLD、750W) |
OS | Microsoft「Windows 10 Home 64bit版」 |

テストには、優秀なコスパで人気のあるMSI製X570マザーボードの「MEG X570 UNIFY」を使用した

ファンコントロールは、BIOSデフォルトの「Smart Fan Mode」のまま、テストを行なっている

適度な粘度で塗りやすい親和産業「OC Master SMZ-01R」。2グラムで1100円前後になる



HWiNFOでのシステム情報
コスパ優秀なサイズのロングセラーモデル
1番手は、2017年4月の発売以来ハイエンドCPUの定番CPUクーラーのひとつになっている「無限五 REV.B(SCMG-5100)」だ。

サイズ「無限五 REV.B(SCMG-5100)」。実売価格は5300円前後
3年以上も店頭に並んでいることから分かるように、6mm径×6本のヒートパイプと幅130×奥行き85×高さ154.5mmの大型ヒートシンク、最大1200rpmの静音ファン(KAZE FLEX)による高い冷却性能を誇る人気CPUクーラーになっている。
メモリーとの干渉を完全に排したヒートシンク形状なので、テスト環境に使ったRGB LEDバーをヒートスプレダーに備えるG.Skill「Trident Z Neo」と組み合わせてもヒートシンク&ファンが干渉することはない。全高も154.5mmと、多くのPCケースで使うことができるサイズなのも良いところだ。
そのうえ、初めてのPC自作者でも取り付けしやすいブリッジタイプの固定方法や、取り付け用ドライバーが付属しているのも、おすすめできる理由の1つと言える。

ヒートパイプは受熱ベースから左右に6本ずつ出ており、効率よく熱をフィン移動させられるようになっている

5300円前後の手ごろな価格だが、発売当初は7000円近くしていただけあって、ヒートシンクやフィンの品質に安っぽさはない

背の高いヒートスプレッダーを備えるメモリーも安心して使用できる
肝心の冷却性能は平均温度80.8度、最高温度86.1度になった。組み合わせるPCケースの吸気と排気のバランスで変わってくるが、サーマルスロットリングが機能するRyzenの上限温度は95度なので、Ryzen 9 3900XTの運用は余裕と言える。
騒音値もアイドル時36.1dBA程度、HandBrake処理中37.4dBAと優秀なので、ケース内に収めてしまえば気にならなくなるだろう。