ストレージの性能は、ゲームのロード時間に大きく影響し、性能が高いほど速くなるので、プレイ時のストレスが軽減される。前回の記事では、それぞれスペックの異なるSSDやHDDを用意し、またAMDのストレージ高速化技術「StoreMI 2.0」も用い、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ」のロード時間がストレージ環境によってどれだけ変わるのか検証した。
その際、HDDとSSDでは明確なロード時間の差が見られ、StoreMIについてもその有効性を確認することができた。では、別のゲームではどうなのか。今回は、「Project CARS 3」について、同様にストレージごとにロード時間を比較してみたい。
Project CARS 3はSlightly Mad Studiosが開発したレーシングシムで、販売はバンダイナムコエンターテインメントが手掛ける。タイトルどおりシリーズ3作目にあたるゲームだ。リアル志向で人気を博しているタイトルだが、実際にプレイしてみると、各レースメニューに移行する際、コースデータのロードが発生するほか、レースメニューからメインメニューへと戻る際にもロードがあるため、読み出しの遅いストレージではコースを変えたりする際にテンポが悪くなり、ストレスを感じやすくなってしまう。
そこで、今回もSerial ATA 6Gbps接続の3.5インチHDDと、同じくSerial ATA 6Gbps接続の2.5インチSSD、それにNVMe接続のM.2 SSD、PCI Express 4.0接続のM.2 SSD、さらにHDDとSSDを組み合わせたStoreMI 2.0で、ロード時間がどのように変化するのか確かめてみた。
なお、利用したストレージは、順に「BarraCuda」(型番:ST2000DM008、容量2TB)、「BarraCuda 120 SSD」(型番:ZA500CM1A003、容量500GB)、「FireCuda 510」(型番:ZP500GM3A001、容量500GB)、「FireCuda 520」(型番:ZP1000GM3A002、容量1TB)である。なお、システムはPlextorの「PX-512M9PeG」に作り、どのストレージもデータドライブとして利用している。
StoreMI 2.0は、HDDにFireCuda 520を組み合わせて使用する。SSDをHDDのキャッシュとして利用し、HDDのアクセス速度を向上させるという仕組み上、テスト1回目ではキャッシュデータが十分に蓄積されないため、テスト5回目の結果も合わせて載せている。そのほかのテスト環境は表のとおり。
テスト環境 | |
---|---|
CPU | AMD「Ryzen 7 3700X」 (8コア/16スレッド、3.6GHz~4.4GHz) |
マザーボード | ASRock「X570 Taichi」(AMD X570) |
メインメモリー | DDR4-3200 8GB×2 |
ビデオカード | Sapphire「NITRO+ RX 5700 XT 8G GDDR6」 (Radeon RX 5700 XT) |
システムストレージ | Plextor「PX-512M9PeG」 (M.2、NVMe、512GB) |
検証ストレージ | Seagate「BarraCuda」 (3.5インチ、Seriala ATA 6Gbps、2TB) Seagate「BarraCuda 120 SSD」 (2.5インチ、Serial ATA 6Gbps、500GB) Seagate 「FireCuda 510」 (M.2、NVMe、500GB) Seagate「FireCuda 520」 (M.2、PCIe 4.0、1TB) |
電源ユニット | SilverStone「SST-ST1200-G Evolution」 (1200W、80PLUS Gold) |
OS | Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」 |
PCI Express 4.0とNVMeの差異はほとんどない
Project CARS 3でもStoreMI 2.0の効果は絶大
では、早速テスト結果を見ていこう。まずは、ゲーム起動時のロード時間の比較だ。ここでは、ゲームの起動した瞬間からオープニングムービーが始まるまでの時間を測定した。なお、測定にはストップウォッチを利用した都合上、5回テストを行ない、その平均を結果として採用している。
その結果だが、やはりHDD(Serial ATA 6Gbps接続)は1分以上も時間が掛かっているが、SSDに変えることで30秒近い時間の短縮を実現している。だが、SSD同士を比較するとSSD(Serial ATA 6Gbps接続)は若干遅くなってはいるものの、概ね37秒前後で大差ない形となった。また、StoreMI 2.0は、1回目はHDD(Serial ATA 6Gbps接続)と変わらないものの、5回目ともなるとSSDがキャッシュとして有効に働き、ほかのSSDと遜色ない結果を残している。
続いて「Shanghai Night」というレースを選んだ際のロード時間を測定してみた。ここで、レースを選択し、そのレースが始まるまでの時間と、そのレースからメインメニューに戻る時間を、前述と同様にストップウォッチで測定し、それを5回繰り返し平均を求めている。
その結果だが、やはりHDD(Serial ATA 6Gbps接続)は30秒以上要しており、レースを選択する都度、このロード時間が発生するのでかなりストレスを感じやすい。一方、SSD(Serial ATA 6Gbps接続)ではそこから10秒以上早くなり、M.2 SSD(NVMe接続)やM.2 SSD(PCIe 4.0接続)では20秒を切るまでに至っている。PCIe 4.0のアドバンテージはあまり感じられないものの、ここまで早くなるとHDD(Serial ATA 6Gbps接続)とは雲泥の差だ。
また、StoreMI 2.0については、ゲーム起動時と同様に初回だけはさすがに時間を要しているが、5回目ともなるとM.2 SSD(PCIe 4.0接続)とほぼ同じ結果を実現している。なお、メインメニューへ戻る際のロード時間は、ストレージの違いであまり大きな差は出ていない。
では違うレースではどうなのか、「Havana Laugh」でShanghai Nightと同様のテストを行なってみた。
すると、結果はShanghai Nightを踏襲する形となっており、HDD(Serial ATA 6Gbps接続)は20秒以上と、ほかのSSDより5秒以上も遅い結果になった、また、SSD同士の比較をしてみると、ここではM.2 SSD(PCIe 4.0接続)が最も早く、次いでM.2 SSD(NVMe接続)、SSD(Serial ATA 6Gbps接続)という順になった。
最大で1秒程度の差しかないものの、レースを変更する際に毎回ロードが行なわれるため、この1秒にこだわりたい人もいるのではないだろうか。なお、ここでもメインメニューに戻る時間に、ストレージによる差異はほとんどない。また、ここでもStoreMI 2.0の効果は5回目の結果を見ると一目瞭然だ。
最後に、Project CARS 3ではリプレイ機能が用意されているため、一度Shanghai Nightをプレイし、そのリプレイデータをロードする時間を比較してみたい。なお、測定方法はこれまでと同じく、ストップウォッチで5回測定し、その平均を結果として挙げている。
すると、HDD(Serial ATA 6Gbps接続)が時間を要するのはこれまでと同様なのだが、SSD(Serial ATA 6Gbps接続)もそれに近い結果になってしまっている。M.2 SSD(PCIe 4.0接続)やM.2 SSD(NVMe接続)は16秒台で終わっているため、同じSSDでもSerial ATA 6Gbps接続では遅くなってしまう点は興味深い。また、StoreMI 2.0は、ここでも5回目のロードで、その効果がハッキリと表れている。
ストレスなくプレイするにはSSDを用意したい
StoreMI 2.0は手軽に高速化できる選択肢
以上のテストでは、HDD(Serial ATA 6Gbps接続)の遅さが際立つ結果となってしまったが、前述したようにProject CARS 3ではロードで待たされる場面がしばしばある。だが、ストレージをSSDに変更することでそれに要する時間を減らせることはかなり魅力的だ。
リプレイデータのロードでは、SSD(Serial ATA 6Gbps接続)でも時間が掛かっており、ストレスなくプレイするためにはM.2 SSD(PCIe 4.0接続)やM.2 SSD(NVMe接続)を用意したいところ。
だが上記の結果を見るに、データの移行が面倒と感じる人にとっては、データをそのままにSSDを追加するだけでキャッシュとして利用できるStoreMI 2.0も、Project CARS 3では魅力的な選択肢と言えるだろう。
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