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Rage Modeと呼ばれるオーバークロック動作を実装
さて、次はカードレベルの工夫について。まず性能を引き上げる工夫として、Rage Modeと呼ばれるオーバークロック動作と、もう1つ「プラットフォームレベルでの性能改善」がある。
このプラットフォームレベルでの性能改善、具体的にはCPUからGPUへのフルアクセスが可能というものだが、これだけだと意味がわからない。これについてもう少し説明があって、おぼろげながら正体が見えてきた。
現在のGPUカードを含むPCIeデバイスは、CPUからローカルメモリーへのアクセスは256MBに限られている。これはPCI Expressの仕様であり、Host(つまりCPU)からアクセスできる上限となっている。ただ、Radeon RX 6000シリーズの場合は全製品16GBのメモリー容量を持っており、ということはPCIe経由ではRadeon RX 6000シリーズ全体のメモリーの64分の1しかアクセスできないことになる。
ところが、Ryzen 5000シリーズとRadeon RX 6000シリーズを組み合わせた場合、Smart Access Memoryという機能が利用可能になり、これを利用することで16GBのメモリーにフルアクセス可能になるというのがこの「プラットフォームレベルでの性能改善」である。この結果として、DirectX 12/Vulkan対応のゲームであれば5%~11%の性能改善が見込めるとする。
さてこれはなにか? であるが、Smart Memory Accessを利用した場合、メモリーをPCIeのI/Oメモリー空間でアクセスするのではなく、CCIXを利用して直接アクセスしているものと思われる。
もともとAMDは7nm VEGAとZen 2世代のEPYCでCCIXへの対応を済ませている。コンシューマー向けにはまだCCIXは不要ということでRyzen 3000シリーズではCCIXは無効化されていたが、おそらくRyzen 5000シリーズはRadeon RX 6000シリーズと組み合わせる場合はCCIXモードで動作できるのだろう。この場合、メモリーアクセスにPCI ExpressのRoot Complexを経由する必要がなくなるから、特にメモリーアクセスのオーバーヘッドが大幅に減少する。
対応するゲームがDirectX 12ないしVulkan、というあたりもこれの傍証となる。DirectX 11まではPCI Express(or PCI/AGP)デバイスを前提としたドライバーで動作するため、CCIXに対応ができない。厳密には、CCIX上で動くPCIデバイスのエミュレーターを用意すれば不可能ではないだろうが、性能的なメリットは皆無である。ところがDirextX 12やVulkanではこうした前提がないので、メモリアクセスそのものが高速化されることになる。
現状インテルのCPUはCCIXへの対応の予定がないので、これはあくまでもRyzen 5000シリーズとの組み合わせでのみ利用できる特徴と言える。
なおレイテンシーに関して言えば、もともとAMDはRadeon Anti-LagやRadeon Boostといった機能を提供してきており、これはRadeon RX 6000シリーズでも健在であり、説明では例えば4KのFortniteで37%のレイテンシー削減が可能とした。