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「Precision Boost OverDrive 2」でのOC方法を解説!Ryzen 5 5600Xの性能を引き出す設定は?(3/4)

加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

PBO2でRyzen 5 5600Xの性能はどう変化したのか?

では、PBO2でRyzen 5 5600Xの性能がどう変化したかを検証してみよう。今回はRyzen 5 5600Xに対し、以下の6種類のPBO2設定を用意し、定格時からどの程度性能が変化したかを検証する。前述した筆者の検証環境で安定したPer Core設定のみ、優秀なコアであるCore 1とCore 5のみ0で、それ以外は-6。All Coreの-10設定はOSが起動すらしなかったため除外、さらに同じ0でもPositiveとNegativeで違いが出るか見るために+0と-0でテストした。

テストした設定
Ryzen 5 5600X PBO2、-0〜-6(Per Core)
Ryzen 5 5600X PBO2、+10(All Core)
Ryzen 5 5600X PBO2、+5(All Core)
Ryzen 5 5600X PBO2、+0(All Core)
Ryzen 5 5600X PBO2、-0(All Core)
Ryzen 5 5600X PBO2、-5(All Core)
Ryzen 5 5600X 定格

まずは「CINEBENCH R23」のスコアーに影響が出るかどうかチェックしよう。R23になって10分連続で回した後のスコアーを計測するようになった(Advancedに設定すれば従来通り一発取りも可能)ので、10分後のスコアーを比較する。

「CINEBENCH R23」のスコアー

この結果から、PBO2ではCurve OptimizerのカウントをPositive方向に増やすことはあまり良くないことが分かる。通常のOCで無理めな設定を通す時にはコア電圧上げが定石だが、PBO2のCurve Optimizerでカウントを一律上げるとスコアーが下がってしまう。電圧を増やすことで発熱や電力的な余裕が無駄に消費され、結果として性能が出なくなることを示している。

Negative方向にカウントを増やすと余裕が増えるためスコアーも上がるが、減らしすぎるとOSすら起動しなくなるので見極めが重要。そして今回筆者の検証環境で導かれた“-0〜-6”の設定であれば、一律-5よりもさらに高いスコアーが出たが、一律-6ではCINEBENCH実行中にPCが落ちてしまう不具合に遭遇したので、優秀なコアに対するカウント変更が重要であることがわかった。

続いては「PCMark10」で総合的なパフォーマンスを見てみよう。テストはゲーミング以外の性能を見る“Standard”テストを実施した。

「PCMark10」Standardテストのスコアー

CINEBENCH R23よりもずっと負荷の軽いテストが多いベンチマークだが、どのテストグループ(Essentials/Productivity/DCC)でも全体傾向はCINEBENCH R23に似ている。総合スコアー(Standard)は定格よりもNegative側に寄せた方が高く、Positive側に増やすとむしろスコアーは悪化した。また+0と-0を比べると総合スコアーはわずかに+0の方が上回った。ただしこれは誤差ともいえる差であるため、両者は実質同じ、といっても良さそうだ。

続いては「3DMark」の“Fire Strike”と“Time Spy”でグラフィックのパフォーマンスをチェックしてみよう。

「3DMark」Fire Strikeのスコアー

「3DMark」Time Spyのスコアー

ここで見るべきはCPU性能がダイレクトに効くPhysics/Combined/CPUテストの結果だ。これはCINEBENCH R23と同傾向だが、差が非常に小さく実感できるほどではない。CPUの影響が小さいGraphicsスコアーはCINEBENCH R23では散々だった+5や+10が-5の結果に僅差で勝っているが、これも体感できる差とは言いがたい。

ここからは実アプリに基づいた検証に入ろう。まずは3DMarkのUL社が昨年末リリースしたクリエイター向けベンチ「UL Procyon」から、“Photo Editing”テストを試す。これは検証PCにインストールしたAdobeの「Lightroom Classic」「Photoshop」を実際に動かすので、計測しにくい細かいパフォーマンス検証が可能になる。

ちなみに「Premiere Pro」を動かす“Video Editing”テストもあるが、テスト時間がやたら長く負荷がGPUに寄りすぎる傾向があるのでここでは使用していない。

「UL Procyon」Photo Editingテストのスコアー。数値のないものはテスト途中で落ちたことを示している

このテストでは、一部条件下でPCがフリーズしたり、テストが中断したりする症状がみられた。-0で通って+0でエラーが出るのは少々納得がいかない(-0で落ちるのはNegative方向がダメ、と言う点で納得がいく)。

ここで注目したいのは-5はテストが完了しないが、優秀なコアだけNegativeのカウントを小さくした設定(-0〜-6)では通ったという点だ。試行回数に時間的限度があったため-0〜-6なら絶対落ちなかった、と断言できないのが辛いところだが、少なくともAll CoreでNegativeにするよりも、Per Coreで優秀なコア以外のカウントを増やした方が効果的かつ安定することがわかった。

続いては「Media Encoder 2020」を利用したエンコード検証に入ろう。Premiere Proを利用して編集した約3分半の4K動画をMedia Encoder 2020でMP4形式に書き出した際の時間を計測した。VBR 1パスでH.264は平均80Mbps、H.265は平均50Mbps設定とした。

「Media Encoder 2020」によるエンコード時間

H.264だとどの条件でも完走できたが、H.265では落ちる設定が続発。Per Coreで-0〜-6の設定なら落ちなかったが、CINEBENCH R23で好成績を出した-5や-0はPCが落ちるなどで完走できなかった。All CoreでもPBO2は動くことは動くが、安定動作を狙うにはPer Core設定で詰めた方がより良い結果を出せるようだ。

続いては実ゲームの例として「Rainbow Six Siege」を試す。APIはVulkanとし、画質“最高”にレンダースケール100%を追加。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。CPUパワー勝負なので解像度は1920×1080ドットのみだ。

「Rainbow Six Siege」Vulkan、1920×1080ドット時のフレームレート

このテストではAll Coreの-5ではテストが完走しなかったが、All Coreでも-0より上ならば完走した。だがPer Coreにすれば優秀なコア以外を-6に下げても完走する。優秀なコアに対するNegativeカウントを小さくするのはPBO2の勘所といえるだろう。

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