Ryzen APU搭載の小型PCも個人向け、法人向けどちらも好評
——話が変わりますが、市場を見ると省スペースPCの重要が高いですが、御社のMini PCはいかがですか?
市川氏:個人向けと法人向けの両方でMini PCはかなり好評ですね。どちらの用途でも広く対応できる性能と機能性、そしてコンパクトさが需要にマッチしているんだと思います。最近のテレビは高性能でインターネットへのアクセスもできますが、それでもリビングで動画の視聴をPCでしたいと考えるユーザーさんもいらっしゃいます。そういった方がMini PCを選ばれるようです。本当は昨年の9月に発売を予定していたのですが、モバイル向けRyzen 5000シリーズを搭載したモデルを4月か5月には発売できると思います。
——これまでの話では、AMDプラットフォームは比較的好調なようですが、AMDに対するイメージは今と昔で変わりましたか?
市川氏:個人的な印象ですけど、今まで以上に“強くなった”と思います。AMDの昔の製品をご存じの方なら察しが付くと思いますが、今のRyzenはとくにハイエンドモデルで非常に高いパフォーマンスを発揮します。その一方でAPUのようなローエンド向けのモデルも、ワットパフォーマンスが向上しており、まさにラインアップに隙がなくなったというイメージです。
——では、AMDに今後要求したいことってありますか?
市川氏:先ほどお話しましたとおり、CPUのRyzenという名前は、AMDを知らないような一般のユーザーさんにもかなり浸透してきたと思います。その一方で、Radeonは6000シリーズでかなり性能が向上しましたが、まだ多くのシェアを得たとは言えない状況です。これは弊社もユーザーさんにより魅力的な製品を提供していかないといけないのですが、AMDにはGPUの“Radeon”というブランドネームも、多くのユーザーさんに認知されるよう頑張って欲しいですね。
——それは性能面も含めてですか?
市川氏:はい。競合製品をはるかに凌駕するようなGPUを開発してもらえると、今後の自作市場もおもしろくなっていくと思います。
——メーカーという立場を離れて、個人的で構いませんので、何かこんな機能を備えたマザーボードが欲しいとかありますか?
市川氏:AMDプラットフォームは、ここ最近ずっとSocket AM4で来ているので、ハイエンド向けとそれ以外というように、セグメントでプラットフォームを分けてもいいんじゃないかと個人的には思っています。
——プラットフォームが変わらないと、ユーザーは長年同じマザーボードを使い続けると思うのですが、マザーボードメーカーとしてはプラットフォームが世代ごとに変わるほうがありがたいのでしょうか?
市川氏:会社側の話をしますと、高い製品が売れてくれるほうがありがたいのは確かです。ですが、個人的には弊社のマザーボードをユーザーさんに長く使っていただけるほうがうれしいですね。ですが、CPUの世代が進むに連れて、マザーボードにも新しい機能が搭載されていきますので、ユーザーさんが必要とする機能がマザーボードに実装された際には、アップグレードを図っていただければと思います。
——確かに。御社の製品に限った話ではなく、AMD X570搭載モデルより、AMD B550搭載モデルのほうが新機能を多く見掛けますね。
市川氏:これは、マザーボードのリリース時期によりますので、当たり前の話ではあるのですが、新製品に新機能が搭載されるんです。弊社の製品ですと、AMD B550搭載モデルには、ノイズキャンセリング機能を装備しているのですが、こちらはAMD X570搭載モデルには用意されていません。これも、AMD B550搭載モデルのほうが新しいためですが、そういった新機能も用意していますので、同じSocket AM4プラットフォームですが、マザーボードの買い替えも検討していただければと思います。
——そういった新機能を備えたAMD X570搭載のブラッシュアップモデルを新たに発売する予定はないのですか?
市川氏:出て欲しいと思っているのですが、現在のところは予定がないですね。AMDの次世代チップセットの話がちらほら出てきていますが、その世代の新製品には、現在のAMD B550搭載モデルに用意されている機能は盛り込んでいくかと思います。
——ユーザーさんから要望が多い点などありましたら教えてください。
市川氏:Mini PCにThunderboltを実装して欲しいというコメントはすごく多いですね。競合製品では、コンパクトなPCでThunderboltを搭載したモデルは少なくありません。そういった状況を考えると、AMDプラットフォームでThunderboltを求めるのは自然な流れなのかなと感じます。先日、弊社の製品担当と会議を行なう機会がありまして、次の次ぐらいの世代で欲しい機能について聞かれましたので、Thunderbolt 4と言っておきました。実際に搭載されるかどうかはまだ分かりませんが、ユーザーさんには楽しみに待っていただければと思います。
——Thunderboltの需要は高いのでしょうか?
市川氏:やはりケーブル1本で済む汎用性の高さと、高速なデータ転送は、クリエイターの方々を中心に需要があるようです。あと、これは個人的ですが、USBよりもThunderboltのほうが、相性問題が起き難い印象があります。現在、YouTubeなどを見るとゲーム実況をされるユーザーさんが非常に多いですが、コンシューマーゲーム機などの場合は、PCにThunderbolt対応のキャプチャーデバイスを装着される方もいらっしゃるようです。そういった用途で、Thunderboltは重宝されているみたいです。
——なるほど。では、Thunderboltに対応した新製品も予定されているのでしょうか?
市川氏:はい。弊社では、AMD B550チップセットを採用した「ProArt B550-CREATOR」というThunderbolt 4を搭載したモデルを、近々、日本市場で投入する予定です。他社さんの動向は分からないところがありますが、おそらく日本市場では初のThunderbolt 4搭載モデルになるかと思いますので、そちらも期待していただきたいです。
——今後、マザーボードでもビデオカードでも構いませんので、御社が力を入れて行きたいモデルがりましたら教えてください。
市川氏:現在の市場で、価格的にも性能的にもユーザーさんに高い評価をいただいているので、今後も変わらずSTRIXシリーズやTUF GAMINGシリーズをメインとして推していきたいですね。