――現在の日本市場では、グラフィックスカードが店頭に並んでもすぐ売れてしまう状況が続いて、欲しくても買えないと言っているユーザーが多いです。この状況を御社はどのように考えていますか?
新宅氏:グラフィックスカードの品薄状態が続いていることは、弊社としても心苦しく思っています。やはり、個人的にはゲーマーのみなさんに弊社のグラフィックスカードを使って欲しいと思っています。特に、予算はあるけど店頭に在庫が無くて、ゲームをプレイするために仕方なく安価なモデルを購入しているユーザーさんがいる状況が歯がゆいです。やはり、ユーザーさんには楽しくゲームを遊んで欲しいです。
――AMDプラットフォームを選ばれるユーザーに共通の傾向などはありますか?
新宅氏:結構雑な括りではあるんですが、年齢層で言うと若い人はRyzenを選ぶ傾向が高いですね。昔のAMDを知っているユーザーさんはRyzenを選択するのに一歩踏みとどまってしまうというのがあるのかもしれません。日本のユーザーさんは、本当に製品をよく見ていて、一般向けに用意したモデルでも十分な機能と性能を備えていればゲーミングに使ったり、ゲーミング向けモデルをクリエイターの方がコンテンツ制作に使ったりと、機能や品質にこだわったうえで、それを使いこなしているユーザーさんが多いですね。
――ユーザーの声はいかがですか? AMDプラットフォームで御社に何か要望などはユーザーから来ていますか?
新宅氏:MEG X570 UNIFYのようなマザーボードは今後も続けて欲しいという要望はありますね。あと、これは言い難いのですが、デザイン上でゲーミングドラゴンの主張を抑えて欲しいというのもあります。このあたりも国民性ですね。欧州あたりだと、ドラゴンのデザインが喜ばれるのですが、日本では派手めのものは敬遠されがちです。シンプルだけどストロングという質実剛健な路線は、今後も発展させていって欲しいというのが、弊社に寄せられるユーザーさんの声では多いですね。
――日本市場の声というのはどの程度本社に届くものなんでしょうか?
新宅氏:弊社の主戦場は欧米になりますので、日本市場の声はなかなか本社に届き難くかったですが、すべてのモデルにARGBを搭載して欲しいと日本側から挙げた声は採用されました。また、5年ほど前までは日本市場の声は届きにくい時期もありましたが、去年OCERの清水貴裕さんと契約により日本ユーザーのアドバイスが本社に届けやすくなったりしています。あとは、細かい話なのですが、マザーボード上のレイアウトに関して、日本から様々なフィードバックを送り検討された結果、次世代より採用される予定です。
――Thunderboltを実装して欲しいというユーザーの声はありますか?
新宅氏:他社さんはどうか分かりませんが、弊社ではさほど多くないですね。Thunderbolt 4やUSB 4.0の普及タイミングで変わってくるかもしれませんが、弊社ではThunderbolt対応を大々的にアピールするといったことはないですね。ですが、最上位モデルにはThunderboltのピンヘッダを用意していますので、そちらを使っていただければと思います。
――今後、御社が推していきたいモデルはどれになりますか?
新宅氏:弊社としていま、3本の軸を用意していまして、ハイエンド向けではMEG X570 UNIFY、ミドルレンジ向けはMAG B550 TOMAHAWKやMPG B550 GAMING PLUSとなります。
――ノートPCに関してはいかがでしょう。御社のゲーミング向けノートPCの人気が高いですが、RyzenやRadeon搭載モデルも好評ですか?
新宅氏:去年ノートPCのRyzen+Radeon搭載モデルをいち早く発売しまして、おかげさまで非常に好調でした。モバイル向けRyzenのパフォーマンスが非常に優秀ですので、本社の開発チームでは、Ryzen+Radeonの最新モデルも手掛けたいという話は聞いています。こちらはノートPCではないのですが、TSUKUMOさんのBTO PCの「G-GEAR Powered by MSI」シリーズから、最新世代のRyzen+Radeon搭載モデルが販売されています。
――漠然とした質問で恐縮ですが、AMDに対してどのようなイメージを持っていますか?
新宅氏:隙がなく強いというイメージを持っています。例えば、CPUのラインアップですと、メインストリーム向けで上は16コアから下はAPUまで用意されていますので、まさに隙がラインアップです。これらのCPU性能も隙がありませんし、もちろんコスパにもまったく隙がありません。あとは個人的にですが、チャレンジ精神が旺盛な印象があります。GPUが特にそうですね。これまでになかった仕様をどんどん取り込んで、まったく新しいものを投入してきています。
――AMDにこれだけは何か言いたいことはありますか?
新宅氏:そうですね、先ほどの“隙のなさ”だけは絶対にブレて欲しくないですね。
――今後、AMDプラットフォームで何か予定されている新製品はありますか?
新宅氏:マザーボードで、X570搭載モデルとB550搭載モデルの差が開いています。例えば、ミドルクラスのB550チップセットを採用するMEG B550 UNIFYというモデルは90A対応のVRMを搭載している一方、ハイエンドのX570チップセットを搭載するMEG X570 UNIFYのVRMは60Aまでの対応と、逆転現象が起きています。そのあたりも含めて、リフレッシュモデルを発売したいところです。
弊社の製品は、X570搭載モデルであればファンの位置、B550搭載モデルであればUSB Type-Cを必ず用意するなど、ユーザビリティーを重視しています。これからも“使い勝手のいい”マザーボードを用意していきますので、ご期待いただければと思います。
――パッと見ただけでは分からないけど、使ってみると「これイイ!」となるようなイメージでしょうか。
新宅氏:そうですね。電源回路の強化とか分かりやすいところもあるんですが、使いやすさをもっと充実させていきたいと考えています。特に初心者の方が、マザーボードの機能を全部把握することは難しいと思います。そういった方に、「MSIのマザーボードであれば必要とする機能が全部用意されている」という安心感を訴求していきたいですね。