世界的な半導体不足と、マイニング需要の増加によるグラフィックスカードの品不足は依然として続いている。そのあおりを受けて、グラフィックスカードの価格が高騰中だが、そんな状況下でも比較的購入しやすいカードとして「Radeon RX 6700 XT」(以下、RX 6700 XT)が注目を集めている。
そこで、今回はMSIのRX 6700 XT搭載モデルである「Radeon RX 6700 XT GAMING X 12G」(以下、RX 6700 XT GAMING X)を取り上げ、どのようなカードなのか紹介するとともに、ゲームを快適にプレイできるかどうか確かめてみたい。
ブーストクロックを2.6GHz以上に引き上げたクロックアップモデル
まずは、RX 6700 XT GAMING Xの動作クロック設定を確認しておこう。RX 6700 XT GAMING Xのゲームクロックは2514MHz、ブーストクロックは2622MHzと、リファレンス比で前者は90MHz、後者は41MHz引き上げられたクロックアップモデルだ。ブーストクロックで2.6GHz、ゲームクロックも2.5GHzを上回っているというのは、なかなかインパクトがある。
さらに付属アプリケーションの「MSI Center」(Version 1.0.20.0)を利用することで、「Extreme Performance」「Balanced」「Silent」といった3つのユーザーシナリオに変更可能だ。工場出荷時設定はBalancedで、その動作クロック設定は前述のとおり。
Extreme Performanceは、具体的な動作クロック設定は公開されていないものの、GPU-Zで確認したところ、ブーストクロックは2714MHzとさらに92MHz向上した。一方のSilentは、同様にブーストクロックが2615MHzと、Blanacedから7MHz低下した。
グラフィックスメモリーは、GDDR6を12GB搭載。RX 6700 XT搭載モデルすべてに言えることだが、ミドルレンジ向けGPUで大容量のグラフィックスメモリーを備えている点はかなり魅力的だ。なお、MSI Centerで設定できるいずれのユーザーシナリオも、メモリークロックは16Gbpsで変わりはない。
オリジナルクーラーのTWIN FROZR 8を搭載
TORX FAN 4.0仕様のファンブレード
それでは、RX 6700 XT GAMING Xのカードを見ていこう、カード長は実測で278mm(※突起部除く)で、RX 6700 XTリファレンスカードが同266mmだったのに比べると、12mmほど長い計算になる。ただ、RX 6700 XT GAMING Xの基板自体は246mmほどしかないので、GPUクーラーがカード後方に30mmほどはみ出た格好だ。また、マザーボードに装着した際、垂直方向にブラケットから24mmほどはみ出ている点も注意しておきたい。
GPUクーラーは、2.9スロット占有タイプの「TWIN FROZR 8」と呼ばれる同社オリジナルのもの。100mm角相当のファンを2基搭載しているが、そのファンブレードは2枚を1組として外輪部を結合させた「TORX FAN 4.0」仕様。
MSIによると、この仕組みにより、エアフローの整流性を高め、より効果的な冷却を実現できるという。さらに、GPUの温度が低い状態では、ファンの回転を停止する「Zero Frozr機能」を実装。このZero Frozrは、先ほどのMSI Centerから無効にすることができ、その場合は常時ファンが回転するようになる。
ヒートシンクを見ていくと、6mm径のヒートパイプを5本使用しているようで、MSIによるとGPUベースとはコアパイプと呼ばれる技術で接触しているという。このコアパイプは、ヒートパイプを直方体にすることで接触面積を最大にするというもの。これにより、効果的に熱平衡が可能となり、最適な冷却を実現するとのこと。さらに、放熱フィンに整流装置を組み込むことでエアフローを改善し、静音性と冷却性能の両立を図っている。
GPUクーラーの側面とファン間の線状の意匠にはLEDが組み込まれており、ゲーミング向けモデルらしくきらびやかに点灯する。また、これらのLEDはMSI Centerを用いることで、「Mystic Light」で光り方や色の変更が可能になっている。
補助電源コネクタは8ピンを2基装備。RX 6700 XTリファレンスカードは8ピン+6ピンだったので、電力供給もそれから強化されている。なお、外部出力インターフェースは、DisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1 Type A×1という構成で、こちらはリファレンスカードから変わりはない。
MSI Centerのほかの機能にも触れておこう。「True Color」では画面の輝度や色温度などを変更でき、「EyeRest」「ゲーム」「ムービー」といったプリセットも用意されている。さらに、「Smart Priority」では、MSI AI ENGINEというAIにより、使用しているアプリケーションに自動的に優先順位を付けられる。
もちろん、その優先順位をユーザーが任意に変更することもできる。さらに、ゲームの最適化を行なう「Gaming Mode」や、ネットワークの帯域をアプリケーションに割り当てる「LAN Manager」といった機能も用意されている。