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レイトレーシングが大幅に高速化
ゲームはともかく業務用ではNVIDIAを上回る性能
もう1つの大きな話題は、言うまでもなくレイトレーシングである。NAVI 2ベースとしたことで、レイトレーシングが大幅に高速化されることになった。
DXRT(DirectX Ray Tracing)ではNVIDIAの方にやや分があるかもしれないが、業務用品質ではまた話が少し違うようで、Radeon PRO W6800はQuadro RTX 5000を上回るレンダリング性能を示すとしている。
下の画像は60秒間のレンダリングの結果で、中央がRadeon PRO W6800のものだが、これだとやや差が小さすぎてわかりにくい。
そこで10秒間のレンダリングの結果を示したのが下の画像である。SolidWorksの場合、画面中でオブジェクトを掴んで動かしている間は最小限のレンダリングで描画されるが、ユーザーが手を触れないとどんどんレンダリングを進めて最終成果物に近い描画になっていく。要するにこれは掴んで動かした10秒後の描画であって、もちろん左の描画でも操作に支障はないのだが、どちらが綺麗と言われれば言うまでもなく右である。
AIベースの処理でもNVIDIAを上回る性能
最近はアプリケーションで独自のAIを搭載するものも増えてきた。その1つがTopaz Video Enhancerで、AIベースのアップスケーリングを独自アルゴリズムで実施する処理だが、ここでもRadeon PRO W6800はQuadro RTX 5000より高速としている。
同様にDxO PhotoLab 4で追加されたDeepPRIME(AIベースのノイズ削減)だが、Radeon PRO W5700比で54%高速であり、CPUとは比較にならないとしている。個人的には筆者もこのDxO PhotoLab 4でDeep Primeを使いまくっているので、こうした数字はうれしいところだ(自分でRadeon PRO W6800を使う機会はないだろうが)。
性能の最後はFoundryのNukeというVFX(デジタル合成)ソフトウェアである。CGを利用した動画のポストプロダクションなどで使われるものだが、最新のNuke 13ではAIRと呼ばれる機械学習ツールが搭載されている。以前はNVIDIAのGPUで、Kepler以降のGPUが必要という話だったが、現在はAMDのGPUにも対応している。
肝心の性能だが、Infinity Cacheを無効化するとRadeon PRO W6800の性能はQuadro RTX 5000にややおよばない程度なのが、Infinity Cacheを有効にすることで10%ほど性能が上がり、Quadro RTX 5000を上回るというおもしろい結果になった。
価格性能比に優れるRadeon PRO W6000シリーズ
安定供給できれば業務用のシェア奪回もありうる
AMDはCPUでこそインテルから着実にシェアを奪ってるものの、GPUに関してはなかなかNVIDIAからシェアを奪回するに至っていない。理由の1つは供給が足りないことで、NVIDIAがマイニング用途で空前の品不足に陥っている昨今ですら供給が増やせない(Fab側もいっぱいであり、しかも周辺部品もやはり品不足気味なので、供給を増やすのが困難なのは理解できる)ので、それはシェアを奪えないわ、という話はあるにせよ、価格性能比で優れた製品を投入して差を縮めるのも大事な作業である。今回のRadeon PRO W6800とW6600で多少なりとも業務用のシェアが増えればいいのだが。