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Zen 3世代のAPU「Ryzen 7 5700G」「Ryzen 5 5600G」はPCパーツ高騰時代の救世主なのか?(3/5)

加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

※この記事はASCII.jpからの転載です(文中リンクはASCII.jpの記事に飛ぶことがあります)

検証環境は?

では今回の検証環境を解説しよう。検証用マザーボードについてはAMDから複数メーカーの選択肢が提示されていたので、外部ディスプレー出力端子のあるX570マザーボードを選択した。比較対象としてRyzen 5000シリーズ、Ryzen PRO 4000Gシリーズの中からそれぞれコア数の同じモデルを準備。さらに(AMD本社的に)前世代APUな「Ryzen 5 3400G」も準備した。また、Ryzen 5000シリーズはビデオカードが必須になるが、これはAMD側の指定によりRX 5600 XTを使用している。

検証時のBIOSおよびGPUドライバーは8月2日時点で公開済みの最新版(BIOS:4.40、ドライバー:Adrenalin 21.7.2)を使用している。

【検証環境】
CPU AMD「Ryzen 7 5700G」(8コア/16スレッド、3.8~4.6GHz)、
AMD「Ryzen 5 5600G」(6コア/12スレッド、3.9~4.4GHz)、
AMD「Ryzen 7 5800X」(8コア/16スレッド、3.8~4.7GHz)、
AMD「Ryzen 5 5600X」(6コア/12スレッド、3.7~4.6GHz)、
AMD「Ryzen 7 PRO 4750G」(8コア/16スレッド、3.6~4.4GHz)、
AMD「Ryzen 5 PRO 4650G」(6コア/12スレッド、3.7~4.2GHz)、
AMD「Ryzen 5 3400G」(4コア/8スレッド、3.7~4.2GHz)
CPUクーラー Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」
(簡易水冷、280mmラジエーター)
ビデオカード SAPPHIRE「SAPPHIRE PULSE RX 5600 XT 6G GDDR6」
(型番末尾がXのCPUのみ。Radeon RX 5600 XT)
マザーボード ASRock「X570 Taichi」
(AMD X570、BIOS 4.40)
メモリー G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」
(DDR4-3200、16GB×2)×2
ストレージ Corsair「Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600」
(NVMe M.2 SSD、1TB)
電源ユニット Super Flower「SF-1000F14HT」
(80PLUS TITANIUM、1000W)
OS Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」
(May 2021 Update)

「CINEBENCH R23」で計算力をみる

では「CINEBENCH R23」のスコアーでCPUの計算力を見てみよう。マルチ/シングルスレッドともに10分慣らし運転してからスコアー計測に入るモードで計測している。

「CINEBENCH R23」のスコアー

まずスコアートップは8コア/16スレッドのRyzen 7 5800X。Ryzen 7 5700Gも同じコア数だが、TDPがRyzen 7 5800Xの105Wに対し65Wと低いため、スコアーも伸びないことが示されている。L3キャッシュの量が関係しているのではという疑問はRyzen 5 5600XとRyzen 5 5600Gのマルチスレッドのスコアーに差がないことから棄却される(若干Ryzen 5 5600Gのマルチの方が高いが誤差みたいなものだ)。

また、シングルスレッドスコアーはRyzen 5000シリーズの方が僅かに高くRyzen 5000Gシリーズは対応するRyzen 5000シリーズよりも低位の存在として機能していることが確認できた。

一方、旧世代との比較をするとRyzen 7 PRO 4750Gはシングルスレッド性能でRyzen 5 5600Gに抜かれ、マルチスレッドもコア数が2基も多いのに8%しか上回れていない(Ryzen 7 5700Gに対しては25%近く負けている)。CPUそのものの構造は同じでもCPUコアの世代差+最適化の差で計算力には劇的な差が出ていると思われる。

特定用途ではRyzen 5000シリーズより高速?

続いてはPCの総合性能をみる「PCMark 10」から、Standardテストのスコアー比べを実施する。CG作成や動画編集といったCPU負荷の高い処理よりもWebブラウジングやオフィス系アプリといったライトユースを想定した処理が多いので、新APUの性能を見るには丁度良い。まずは総合スコアーとテストグループ別のスコアーを見てみよう。

「PCMark 10」Standardテストのスコアー

総合スコアー(上のグラフでは“Standard”のバー)を見ると、Ryzen 5000Gシリーズは対応する5000シリーズに対し11〜13%低いスコアーを付けている。だがテストグループ別のスコアーを見ると、DCCテストグループのスコアーが大きく足を引っ張っている一方で、ProductivityテストグループはRyzen 5000シリーズよりも高いスコアーを示している。

さらにZen2世代のRyzen PRO 4000Gシリーズと比較すると総合スコアーで10〜12%高速化しており、こちらは全てのテストグループにおいてRyzen 5000Gシリーズが上回っている。CPUコアがZen 3化したことでかなりの恩恵があったことが示されている。

ではテストグループごとにどんなテストでRyzen 5000Gシリーズが伸びたのか・伸びなかったのかを見ていこう。

「PCMark 10」Standardテスト、Essentialsテストグループのスコアー

まずはWebブラウジングやアプリの起動時間などを見るEssentialsテストグループだが、Zen 3世代のRyzen 5000/5000Gシリーズ4製品の間に決定的な差はでていない。目立つのはアプリの起動時間(App Start-up)であり、今回はRyzen 5 5600Gが僅差でトップに立っている。

そのかわりにFireFoxを利用したテスト(Web browsing)ではRyzen 7 5800Xが僅差で首位になった一方、Ryzen 5 5600Gは5%程度下のスコアーになっている。この2つのテストでプラスマイナス0のような感じとなり、Zen 3世代のCPU/APUではあまり差がないようになっている。

「PCMark 10」Standardテスト、Productivityテストグループのスコアー

LibreOfficeを使った作業を模したProductivityテストグループでは、なんとRyzen 7 5700Gがトップ、続いてRyzen 5 5600Gとなり、その後にRyzen 5800X、5600X……と続く。SpreadsheetにおいてRyzen 5000Gシリーズが非常に良い結果を出している一方で、WritingではRyzen 5000シリーズの方が良いスコアーを出している。

SpreadsheetにおいてRyzen 5000Gシリーズがやたら伸びる理由だが、CPU→メモリーやCPU→GPU等が1ダイで完結しているが故のメリットが効いている可能性がある。確かにLibreOfficeのSpareadsheetにはGPUによる支援が実装されており、実際タスクマネージャーで観察するとComputeエンジンやCopy等のグラフが処理中に稼働していることが認識できる。ただこれがL3キャッシュの少なさやクロックが微妙に低いハンデを覆せるほどなのかまでは、確信が持てるだけの検証作業ができなかった点はお詫びしたい。

「PCMark 10」Standardテスト、DCC(Digital Content Creation)テストグループのスコアー

最後にクリエイティブ系作業を実施するDCC(Digital Content Creation)テストグループでは、Ryzen 5000シリーズが5000Gシリーズを圧倒している。そのスコアー差の源泉となっているのはPhoto EditingとRendering and Visualizationで、それぞれ写真編集と3DCGレンダリングのテストとなる。前者はL3キャッシュ搭載量の差(後ほど別角度で検証する)と、ディスクリートGPUとしてRX 5600 XTを搭載している点に起因している。

特に後者はRendering and Visualizationテスト中に実施される3DCGのフレームレートがスコアーの源泉となっているので、内蔵GPUはどうやっても不利になるのだ。残った動画編集(Video Editing)ではRyzen 5000Gシリーズは5000シリーズよりもスコアーは低めに出ているものの、他の2つのテストよりも差はついていない。

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