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【AMDチップセットマザーボードレビュー第42回】

Socket AM4の“ラスボス”!Ryzen 9と組み合わせたいハイエンドマザー、ASUS「ROG CROSSHAIR VIII EXTREME」(2/2)

文● 石川ひさよし 編集● AMD HEROES編集部

本来OC向けだが、クリエイターが求める高速I/F全部入り

拡張性についても見てみよう。まずはM.2スロットについて。ROG CROSSHAIR VIII EXTREMEには、一般的なマザーボードを大きく上回る5基のM.2スロットが搭載されている。

マニュアルによると、M.2 #1~3がCPU直結で、残る2スロットはチップセット側から同社DIMM.2方式での実装とのことだ。CPU側は#1がPCI Express 4.0 x4またはSerial ATA 3.0、#2/3はPCI Express 4.0 x4対応。そしてM.2 #2-3スロットはPCI Express x16スロットと帯域を共有する(グラフィックスカード x8/M.2 x4/M.2 x4)ことで利用可能になる。CPU側で利用可能なPCI Expressレーン数が決まっているため、こうした共有はしかたない。

ただし、グラフィックスカードを優先するか、ストレージを優先するかという選択肢が選べる点でユーザーにメリットはある。DIMM.2はまるでメモリーのようなスロットに、垂直に挿して利用するM.2 SSD用サブ基板だ。最小のスペースで2基のM.2スロットを実装できる。

ボード上のM.2スロットは3基。M.2 SSDの背面からも放熱できるヒートシンクが搭載されている

同社独自のDIMM.2を採用し、M.2×2基を省スペースに搭載可能

逆に拡張スロットはExtended ATXでもPCI Express x16×2、PCI Express x1×1しかない。先に紹介したとおり、2本のx16スロットは先のCPU直結M.2スロットの#2-3と帯域をシェアするため、パーツを追加するごとに利用可能なレーン数が変わる。

PCI Express x16とCPU直結M.2スロット#2-3のレーン仕様
PCI Express x16 #1 x16 x8 x8 x8
PCI Express x16 #2 なし x8 x4 なし
M.2 #2 なし なし なし x4
M.2 #3 なし なし x4 x4

ASMedia「ASM2812」、その裏にはLite-on(DiodesおよびPericom)といったPCI Expressスイッチチップを搭載。複雑なレーン分割を実現している

インターフェースの充実ぶりもすごい。USB端子として見るとまずバックパネルには40GbpsのThunderbolt 4が2ポートあり、フロント用には20GbpsのUSB 3.2 Gen 2×2 Type-Cヘッダー、10GbpsのUSB 3.2 Gen 2 Type-Cヘッダーも備えている。そしてこちらはCPU直結のM.2スロットのような帯域の共有をしないとのことで、すべてが制限なしに利用できる。

バックパネルには2ポートのThunderbolt 4を搭載。さらにDisplayPort入力端子を2基設け、Thunderbolt 4からの映像出力を可能にしている

チップはIntel JHL8540(Maple Ridge)

Infineon(Cypress)のUSB PDコントローラ「CYPD5225」

USB 3.2 Gen 2×2用のASMedia「ASM3241」

USB 3.2 Gen 2ハブのASMedia「ASM1074」

ネットワークは10GbE、2.5GbE、そしてWi-Fi 6Eの3系統を備えている。10GbEはMarvell(AQtion)「AQC113CS」。AQtionは現在Marvell傘下だがもともとはAquantiaで、10GbEがマザーボードに搭載されはじめた当初から採用例があるチップだ。2.5GbEはIntel I225-V。

2.5GbEはミドルレンジマザーボードでも一般的になってきた。その1つ上をいく10GbEの搭載はハイエンドならでは

10GbEチップのMarvell「AQC113CS」。小さなチップだがサーマルパッドを介してVRMヒートシンクへと熱を逃している

2.5GbEチップのIntel「I225-V」

マザーボード上にはそのほかにも各種端子がある。OC向けのものが多いのは本製品のターゲットがそうしたエンスージアストユーザーであることを示している。各部分の電圧を測定するためのプローブ用ホール、対応する水冷ブロックを搭載した際に利用できるヘッダー(水温、流量、漏水警告など)、対応する水冷ポンプを搭載した際に利用できるヘッダー(水温、流量)、液体窒素冷却用のボタンやスイッチなど、ながめているだけでもおもしろい。また、ファンコントロールやLEDハブ機能、温度センサーなどを搭載する拡張ボックス「ROG Fan Controller」も付属する。

ライバルはsTRX4マザーボードか

ROG CROSSHAIR VIII EXTREMEは本来であればOC向けの製品であり、定格運用ユーザーには電源回路など明らかにオーバースペックなところもある。電源回路はその設計もコストも通常のマザーボードとは比べ物にならない。10万円を超える価格だが、そこに悩んではいけない製品と言える。

Socket AM4マザーボードの「ラスボス」的存在として、Ryzen 9 5950Xや5900Xを組み合わせて頂点を極めたい方には魅力なはずだ。ようやく一般的になってきたUSB 3.2 Gen 2や2.5GbE、Wi-Fi 6といった高速インターフェースはもちろん、さらにその先、Thunderbolt 4やUSB 3.2 Gen 2×2、10GbEを先取りしており、今後長期にわたってインターフェースの悩みは不要だ。特にクリエイティブ用途ではすべてをかなえる1枚と言えるのではないだろうか。

おそらくそうしたユーザーはsTRX4、Threadripper向けマザーボードと比較検討すると思われるが、そこと比較をすると価格機能比で確かに競合できるSocket AM4マザーボードだ。


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