高効率を実現する「DUET RAIL POWER SYSTEM」の14+2フェーズ回路
CPU電源端子は8+4ピン仕様なので、ハイエンドモデルほどのOCを意識したものではないが、アッパーミドルモデルとして十分な余裕がある。VRMは十分なフェーズ数に高品質な部品、高効率な設計を用いておりOC性能も期待できる。
電源回路は14+2フェーズ。PWMコントローラはRenesasの「ISL69247」。組み合わせるMOSFETは同じくRenesasの「RAA220075」。75A対応のSmart Power Stageだ。アッパーミドルクラスの製品ではよく見る組み合わせと言える。フェーズの制御はMSIの言う「DUET RAIL POWER SYSTEM」を採用している。裏面を見てもフェーズダブラーはないが、ダイレクト駆動ではない。PWMコントローラの1チャネルに2つのフェーズを並列にぶら下げる設計だ。
従来までなら、アッパーミドルクラスではフェーズダブラーを用い、メインストリームでDUET RAIL POWER SYSTEMを採用することが多かった。MPG X570S CARBON MAX WIFIのDUET RAIL POWER SYSTEMは同社第2世代のもので、効率面でフェーズダブラーを採用する回路を上回っているのだと言う。
もちろんフェーズダブラーを使用しないからといってコストが下がるわけではなく、高効率化のためにはPCBや部品などでよりよいものを使うことになる。よりコスト要求が高いMAGグレードのモデルでフェーズダブラーを用いているのはそうした理由からだろう。
インターフェースも最新トレンドに刷新
デバッグ機能も充実
インターフェースでは、まず高速ネットワークが挙げられる。有線LANはRealtek「RTL8125B」による2.5GbE、無線LANはIntel「Wi-Fi 6E AX210」を搭載。USBは、USB 3.2 Gen 2をType-A、Type-Cともに十分なポート数備えている。バックパネルのUSB 3.2 Gen 1についてはASMedia「ASM1074」を用いている。
そのほか、自作PC上級者向けの機能も多く搭載している。まずバックパネルにはFlash BIOSボタン、Clear CMOSボタン。前者はUSBメモリーを用いてBIOS更新を行うためのもの、後者はBIOSリセットを行うためのものだが、基板上にボタンやジャンパとしてあるよりもバックパネルに搭載していたほうがなにかと勝手がよい。一度組み込んでしまうと、暗いPCケース内で目的のジャンパを探すのはけっこう大変だ。
また、ブート前に各種ハードウェアチェックを行えるLED「EZ Debug LED」は最近、エントリーモデルでも搭載するようになったが、より詳細が分かるPOSTコード表示用LCDを備えているのも上位モデルらしくてよい。
ほどよい余裕がCARBONの魅力
長期使用を考える方に最適な1枚
MSIのマザーボードラインナップにおいて、CARBONはアッパーミドルの「これを買っておけば後悔なし」的な存在だ。
昨今はPCパーツ全般の価格上昇傾向があるが、それは需要に対する供給量の不足や為替の影響だけでなく、多コア化や消費電力増加など進化したCPUに対応する設計も理由にある。
MPG X570S CARBON MAX WIFIも、以前のCARBONと比べると価格帯が上昇した印象があるが、こうして各部を見ていくと買って後悔しない、得られる信頼度が高い製品という印象だ。
究極OCモデルのような過剰ではないハイエンドユーザー向けのバランスで余裕を持たせた電源回路を搭載し、使用頻度の高いインターフェースもポート数は十分。最近のモデルとしては豊富な拡張性も備えている。長期間現役であり続けるPC、あるいは使用期間は読めないが後々で物足りなく感じないマザーボードを選ぶなら、MPG X570S CARBON MAX WIFIが有力な選択肢となるのではないだろうか。