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グラボが搭載可能な小型ベアボーン「DeskMeet」にRadeon RX 6400を入れて実力をチェック!(2/2)

文●宮里啓介 編集●AMD HEROES編集部

Ryzen 7 5700Gを使い、気になる性能とCPU温度をチェック

 DeskMeet X300が対応するCPUは、TDPが65W以下となるRyzen 5000シリーズまで。この対象となるうち、最速となるCPUはどれかと探してみると、先日発売になったRyzen 7 5700X、もしくは、GPUを内蔵したAPUとなるRyzen 7 5700Gが候補となった。

 どちらも8コア/16スレッドというのは同じだが、キャッシュ容量がRyzen 7 5700Xの方が多いほか、PCIe 4.0に対応する(Ryzen 7 5700GはPCIe 3.0)というのが大きな違いだ。

 どちらのCPUで試すか迷ったが、DeskMeet X300はPCIe 3.0までしか対応していないこと、また、小型PCといえばやはりコスパも気になるため、GPUを内蔵するRyzen 7 5700Gで試すことにした。

8コア/16スレッドとなる「Ryzen 7 5700G」。GPUも搭載するため、小型PCに向いている

 他のパーツは編集部にあるものを利用しているため、特に最新というわけではない。今回試した構成はこちらとなる。

【検証環境】
CPU AMD「Ryzen 7 5700G」(8コア/16スレッド、最大4.6GHz)
CPUクーラー Noctua「NH-L9A-AM4/Y」
メモリー CORSAIR「CMK32GX4M4Z3200C16」(8GB×4、DDR4-3200)
ストレージ Samsung「960EVO」(500GB、PCIe 3.0×4)
ビデオカード ASRock「AMD Radeon RX 6400 Challenger ITX 4GB」(Radeon RX 6400)
OS Windows 11

 高性能CPUで問題となりやすいのが、発熱。CPUクーラーの性能が足りず冷却が間に合わなくなると、動作クロックが落とされてしまい、本来の性能を発揮できなくなる。

 特に小型PCはスペースの関係上、冷却が間に合わなくなりやすい。そこで、CPUの最大性能を見るのに適したベンチマークソフト「CINEBENCH R23」を使い、本来の性能が出ているのか、また、その時のCPU温度はどこまで上昇しているのかをチェックしてみた。

 まずは性能から。

「CINEBENCH R23」の結果。Multi Coreの13535ptsというスコアはRyzen 7 5700Gとして妥当なものだ

「CINEBENCH R23」は、CGレンダリング速度からCPU性能を測ってくれるもの。結果はptsという独自スコアで表示され、この数値が高ければ高いほど高性能なCPUとなる。

 Multi Coreの13535ptsというスコアは、Ryzen 7 5700Gとして特に問題のない数値で、熱によって性能が制限されているといったことは起こっていなそうだ。

 とはいえ、実際何度になっているのかは気になる。そこで「HWiNFO64 Pro」を使い、CPUコアの温度をチェックしてみよう。

「HWiNFO64 Pro」で温度センサーの値を取得。「CPUコア」の温度を見てみると、なんと最大で95℃まで上昇していた

 結果は95℃と高く、これはRyzen 7 5700Gの最大温度と同じ。ベンチのスコアに影響していないことから、ギリギリ冷却が間に合っているといえなくもない。

 そこで、別のCPUクーラーを使うとどうなるのか試してみよう。

 使用したのは、DeskMiniでも定番だった低背の「NH-L9a-AM4」だ。

92mmのファンを採用したNoctuaのCPUクーラー、「NH-L9a-AM4」。高さは約37mmと背が低く、電源との隙間を大きくとれる

 このCPUクーラーへと換装し、HWiNFO64 Proで温度をチェックしてみたところ、CPUコアの最大温度は92.7℃と、約2.3℃ほど低くなっていた。相変わらず90℃台まで上がってしまうとはいえ、95℃ギリギリというより少しは安心できる。

 ただし、これは最大温度を見た場合。温度変化をグラフで見ると、かなり印象が変わる。

Wraith Stealthが急激に温度が高くなり、95℃で頭打ちになるのに対し、NH-L9a-AM4は緩やかな上昇となっていた

 Wraith Stealthの場合、開始後1分ちょっとで90℃を超え、2分ほどで早々に95℃に達していた。性能への影響はほとんどないとはいえ、CPUクーラーの冷却性能が足りていないのが分かる結果だ。

 これに対してNH-L9a-AM4は、開始後1分ちょっとの段階では80℃。90℃を超えるのは、6分ほど経ってからだ。

 多くの用途では、CINEBENCH R23のように常時CPUに高負荷がかかることはないが、少しでも安全な温度の範囲で使いたいというのであれば、NH-L9a-AM4の方が安心できる。DeskMeetは水冷クーラーも含め多くのCPUクーラーが搭載できるだけに、色々試してみるといいだろう。

 なお、NH-L9a-AM4を使った場合のCINEBENCH R23 Multi Coreスコアは13623pts。ほんの少し上昇しているが誤差の範囲となるため、性能面でのメリットはない。

内蔵GPUとRadeon RX 6400の性能をチェック

 DeskMeet X300の強みは、やはりビデオカードを搭載できること。そこで、PC性能がどのくらい変化するのかを定番ベンチマークソフトでチェックしてみよう。

 試したのは、エントリークラスとなるRadeon RX 6400を搭載した「Radeon RX 6400 Challenger ITX D 4G」。これと、Ryzen 7 5700Gの内蔵グラフィックを使った場合で比較した。

ASRockの「Radeon RX 6400 Challenger ITX D 4G」。奥行き約約162mmのショートモデルで、補助電源もいらないという、小型PCに向いた製品だ

 まずはPC全体の性能をチェックできる「PCMark10」から。このベンチマークソフトは、様々な用途のソフトを利用した場合の総合性能を測ってくれるもの。結果はスコアで表示され、この数値が高いほど高性能となる。

 総合スコアのほか、アプリの起動時間やブラウザーの速度を評価する「Essentials」、オフィスソフトの性能を見る「Productivity」、写真や動画編集といったクリエイティブ用途の「Digital Content Creation」のサブスコアにも注目だ。

「PCMark 10」のスコア差は総合で309と、そこまで大きくない。ただし、GPU性能が大きく影響するDigital Content Creationの差は大きい

 ビデオカードを搭載することでDigital Content Creationのスコアが大きく伸び、結果、総合スコアでも上回っている。しかし、EssentialsとProductivityのスコアは逆に下がってしまった。

 スコアを詳しく見てみると、どうやらストレージの利用を伴う用途のスコアが低下しているようだ。といっても、「CrystalDiskMark」でチェックする限り速度には違いはないため、ストレージそのものの問題ではなさそう。画面描画と組み合わせた特定条件で性能が出ない場合がある、といったところだろうか。Radeon RX 6400がまだ登場間もないこともあり、今後のドライバー更新で改善されていきそうだ。

 続いてゲームに大きく影響する3Dグラフィックス性能を「3DMark」で見てみよう。これはAPIにDirectX 11やDirectX 12を使ったテスト、レイトレーシングテストなどが用意されている定番ベンチマークソフトだ。

 解像度の違いも含め、6つのテストで比較してみた。

「3DMark」のスコアは、明らかにRadeon RX 6400がリード。VRAMは足りていないが、レイトレーシングテストの「Port Royal」も動作した

 スコアの傾向はどのテストもほぼ同じで、ザックリ3倍以上。エントリークラスとはいえ、内蔵GPUと比べRadeon RX 6400がいかに強いかが分かる結果となった。また、内蔵GPUではエラーとなってしまったレイトレーシングテストのPort Royalも動作した。

 もうひとつ、ゲーミング性能として「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」の結果も見てみよう。今でもMMORPGとして人気のタイトルとなっているファイナルファンタジーXIVのデータを使ったベンチマークテストで、比較的軽量なゲームが動作するかを判断するのに向いているものだ。

 軽量といっても3D性能が必要なのは確かで、内蔵GPUでは厳しいテストとなる。解像度は1920×1080ドット固定とし、画質はプリセットの「標準品質(デスクトップPC)」と「最高品質」の2パターンで試してみた。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」で、画質を変更した場合の結果。こちらもRadeon RX 6400のスコアが3倍以上になっていた

 内蔵GPUの場合、最高品質で評価が「設定変更を推奨」となってしまい、プレーするのは難しい状況だが、標準品質(デスクトップPC)であれば「普通」となり、なんとか遊べるレベルとなっていた。

 これに対してRadeon RX 6400は、最高品質でも「快適」という評価になっており、快適なプレーが可能。標準品質(デスクトップPC)にまで落とすと「非常に快適」となり、シーンに寄らずカクツキのない描画が期待できる結果となった。

 もちろん、内蔵GPUでもストラテジーやブラウザーゲームといったものであれば十分遊べる実力があるが、3Dグラフィックを使うものはやはり厳しい。フルHDで3Dゲームを遊びたいと考えているなら、ビデオカードは必須といえるだろう。

 なお、Radeon RX 6400の性能をもっと詳しく知りたいという人は、加藤勝明氏による検証記事「補助電源なしで動作する「Radeon RX 6400」カードの実力とは?」を参考にして欲しい。

優れた拡張性で色々な用途で使える小型PCが作れるのが魅力

 DeskMeet X300の魅力は、コンパクトながらも優れた拡張性があること。ビデオカードを搭載してゲーミングPCにできるだけでなく、HDMIキャプチャーボードを挿せば配信用PCにもなるし、3.5インチHDDを搭載してNASを作ることもできる。アイディア次第でどんなPCにもできる自由度の高さは、DeskMiniシリーズになかった特徴だ。

 もちろん、拡張性に優れているといっても「小型PCとしては」という注釈が付くし、サイズだけでいえばDeskMiniシリーズの方が小さい。しかし、機能や性能をアップグレードしたいといった時に、多彩な選択肢から選べるのがDeskMeet X300の強みだ。

 ハイエンド志向の人にとっては中途半端に感じてしまうかもしれないが、この拡張性がこのサイズで実現されていることに意味がある。

 マザーボードとケース、電源がセットになっているベアボーンキットとなるため、自作PCの入門用としても秀逸。自作に興味はあるけど、大きなタワー型PCはちょっと……という人でも、このサイズなら受け入れられるだろう。

 小型の自作PCが欲しいと考えているのであれば、ぜひチェックして欲しい。よく考えられた製品だけに、きっと気に入ってくれるはずだ。

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