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【AMDチップセットマザーボードレビュー第51回】

PCIe 5.0対応で4万円台!ASRock「B650E Steel Legend WiFi」(2/2)

文● 石川ひさよし 編集● AMD HEROES編集部

余裕のあるフェーズ数&MOSFETの出力。ヒートシンクは大型化

続いてCPU電源回路を見ていきたい。電源端子はEPS12V×2だ。Ryzen 7000シリーズ、たとえ最上位のRyzen 9 7950Xを組み合わせても余裕があり、CPUの電力要求に対して1ピンあたりの負荷が軽減される点で、端子の異常発熱などの心配も少なくなる。

EPS12Vは2系統

フェーズ数自体は多いが、多すぎないためフェーズの並びも普通。……と言うよりもハイエンドモデルが異常なので、これを見ると安心する

VRMは16+2+1フェーズだ。この世代のASRockは、フェーズ数を増やす方向でRyzen 7000シリーズの電力要求に応えるコンセプトなのだろう。PWMコントローラーはRenesas「RAA229628」。vCore用、SoC用MOSFETは60Aに対応するRenesas(Intersil)「ISL99360」のSmart Power Stageを採用している。

AMD B650チップセット搭載マザーボードをいくつか見てきたが、上を見れば70A、90A、100A超もある中、60AのSmart Power Stageはエントリーモデルのものよりも若干大出力といったところだろう。ただし、フェーズ数を増やしているのでトータルでの余裕は十分にありそうだ。

PWMコントローラーはRenesas「RAA229628」

メインのMOSFETは60A対応のRenesas「ISL99360」

VDD_Misc用の1フェーズはSinopower「SM4337」を2つ用いていた。こちらはVDDほど要求が高いわけではなく、異なるMOSFETを用いているものが多い。その上で、B650E Steel Legend WiFiを2チップ構成としたのは、よりコストを抑えるための選択ではないだろうか。

VDD_Misc用に用いられていたSinopower「SM4337」

ヒートシンクはCPUソケット上部、左部に分かれた2ピース構造。ブロックタイプで基本的な構造は従来のSteel Legendで用いられてきたものと変わらない。ただし、左部のものはバックプレート部分まで延長され、従来のものよりも大型化している。形状はシンプルに、大型化で冷却性能を引き上げた格好だ。

ヒートパイプなし、ミゾこそ多いがシンプルなブロックタイプ。大型化によってCPUの熱量増加に対応している

そのほか、基板自体はサーバーグレードの8層PCBを採用している。このあたりは、特にPCI Express 5.0対応のため温度や信号品質を考慮した選択と言えるだろう。

USBポート数少なめだがGen 2×2も利用可能。過剰機能は一切なし

Steel Legendはゲーミング向けモデルだ。ゲーミングに求められる高速ネットワーク、現在で言えば2.5GbE、Wi-Fi 6Eといった機能はもちろん搭載されている。2.5GbEはRealtek製チップを用いてコストを抑えているが、むしろその「RTL8125BG」チップは実績も十分なので安心できるのではないだろうか。Wi-Fi 6Eはモジュール「RZ608」の記載があるのでAMD/MediaTek製だ。

種類は十分として、USBポートはやや少なめ

2.5GbE有線LANはRealtek「RTL8125BG」

Wi-Fi 6EはAMD Wi-Fi 6E

USBに関しては守りの姿勢と言えるかもしれない。USB4は取り入れず、最速でもUSB 3.2 Gen 2×2 Type-Cだ。PCB上に設けているのは、高速USBはフロントから使うほうが便利だと考えているためだろう。

そのほか、USB 3.2 Gen 2がバックパネルにType-A/C各1ポート、USB 3.2 Gen 1がバックパネルに4ポート、PCB上に2ヘッダー(4ポート)となっている。USBの総数としては少なめ。USB 3.2 Gen 2も少なめだ。このあたりはコストを抑えようという考えからだろうか。

もっとも、ほかの製品がポート数を増やすにしてもUSBハブチップを介す手法が主流なので、その点ではオンボードのハブか、PC外でユーザーが任意でハブを追加するかの違いと言える。

フロント用にUSB 3.2 Gen 2×2 Type-Cヘッダーを備える

ASMedia「ASM1074」USB 3.2 Gen 1ハブチップが1基だけ搭載されていた。チップセット横にあり、内部ヘッダー用に利用していると思われる

Thunderbolt AICコネクターを備えており、AICカードによってThunderbolt 4を追加できる

オーディオはRealtek「ALC897」を採用している。実績のあるチップだが、現行モデルだと4000番台のチップを搭載するモデルが多い中、古いチップを選んできたなという印象だ。もちろんALC897であることのメリットもあるが、コストを抑える観点もあるのかもしれない。

オーディオコンデンサーはエルナー製を採用している。なお、バックパネルにはS/PDIFこそあれ、アナログジャックはライン出力とライン入力の2つのみだ。必要最低限(と言っても7.1chだが)は備えつつ、高音質を求めるならばユーザー側で拡張すればよい、といったスタンスと言えるだろう。

オーディオチップはRealtek「ALC897」

オーディオコンデンサーはエルナー製

付き合いの長くなるAM5だからこそ
将来への備え万全なマザーボードがベスト

Ryzen 7000シリーズとそれに対応したマザーボードが登場し、特にPCI Express 5.0は期待をしている人も多いと思われる。グラフィックスカードやM.2でPCI Express 5.0が利用できるようになれば、パフォーマンスがまた一段引き上げられるだろう。

ただ、今回その実装は任意となっている。モデルによって対応はマチマチだ。コスト要求が高いAMD B650マザーボードではPCI Express 4.0止まりになるのではないかと思われていた。しかし、B650E Steel Legend WiFiはこれを覆し、グラフィックスカードもM.2もPCI Express 5.0対応を果たしてきた。この価値は高い。

一方で、AMD B650にコスパを求めている人も多い。単に価格の高い安いで見ればB650E Steel Legend WiFiは決して安いわけではない。AMD B650マザーボードは3万円台からある。しかし、より価格を追求したモデルは、PCI Express 5.0に対応していない。ここがポイントだ。B650E Steel Legend WiFiの価格は、PCI Express 5.0対応とゲーミング向けのCPU電源回路のコストだと思えばよい。

もちろん、B650E Steel Legend WiFiは価格のことをよく考えて設計されている。拡張スロットやUSBポートが少ない点ではパワーユーザー向きではないが、PCI Expressのレーン共有を抑え、USBハブチップを省くことで価格を抑えている。

そして、実はこうしたシンプルな実装ほど、安定性の点ではメリットがある。B650E Steel Legend WiFiは、もちろん初心者のハードルを下げてくれる製品だが、こうした点で玄人にこそ選んでほしい製品と言えるかもしれない。

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