消費電力が気になるならSecondary
実ゲームのフレームレートはPrimary BIOSで大幅に伸びる(伸びないものもある)ことが確認できたが、クロックが大きく引き上げられる分リスクもあるはずだ。システム全体の消費電力が大幅に増えていることはテスト済みだが、ここではビデオカードの消費電力(TBP)を正確に計測できるNVIDIA「PCAT」を使用してもう少し詳しく確認してみよう。
ここでの検証は「Tiny Tina’s Wonderlands」を利用する。解像度は4K、画質は”バッドアス”、APIはDirectX 12を指定し、マップ”ブライトフーフ”の城前で15分程度放置した際のTBPを計測した。ここではNITRO+ AMD Radeon RX 7900 XTX Vapor-X 24GBのPrimaryとSecondary BIOSの違いのみをチェックする。
Secondary BIOSを選択した場合、TBPは300Wから440Wくらいまでの間を激しく往復する感じだが、Primary BIOSでは420Wから470Wくらいの狭い振れ幅を維持する動きになる。TBPの平均値はPrimary BIOSで424Wなのに対し、Secondary BIOSでは361W、その差は63Wだが、これは2つのBIOSのTBPの差(65W)とほぼ同じである。
では、同じTiny Tina’s Wonderlandsをプレイ状態にした際のGPU温度やクロックの推移もチェックしておこう。状態の測定には「HWiNFO Pro」を使用した。
まずGPU温度に関しては、Primary BIOS選択時の方がわずかに温度が高くなるものの、それでも63度前後をキープしているのは驚くしかない。あれだけ巨大なクーラーを装備しているのだから当然と言えるが、これほど冷えるなら温度に関してはほぼ気にせず長時間プレイに集中できるだろう。
動作クロックに関してはグラフに2種類のクロックを掲載しているが、これはRDNA 3世代のRadeonにはフロントエンドとシェーダーの2種類のクロックが設定されているためだ。
発表当初のAMDの説明では、シェーダークロックも余裕のある時はフロントエンドと同じクロックまで上がるという話だったが、実際のゲームではフロントエンドの方がシェーダークロックよりも200MHz程度上のクロックで動作している。Primary BIOS使用時のフロントエンドクロックは瞬間的に3GHzを超えているなど、Primary BIOS使用時のGPUクロックはとにかく伸びる印象がある。
まとめ:パワーのPrimary、ワットパフォーマンスのSecondary
以上でNITRO+ AMD Radeon RX 7900 XTX Vapor-X 24GBのレビューは終了となる。リファレンス仕様のSecondaryだとシーンによってはRTX 4080よりやや下回るシチュエーションも見られたが、Primary BIOSでクロックを伸ばしてやれば、ゲームによってはRTX 4080を圧倒することもできる。
そして、何よりファクトリーOCモデルにはつきものの発熱の多さはTri-X coolingのパワーによってほぼ心配する必要なしという点が素晴らしい。その分カードの長さも厚みも増えているため、収容するPCケースは選んでしまうものの、RDNA 3世代のRadeonで最高のゲーム環境を作りたいと考えているなら、安心してオススメできる一枚だ。