2018年7月31日に、AMDから新チップセット「B450」が解禁されました。AM4プラットフォーム向けのチップセット「B450」は「X470」の下位モデルとなっており、「B350」の後継として位置付けられています。
では、「B350」から「B450」になったことで、何が変わってくるのか、既知の方もいらっしゃるかもしれませんが機能だけでなく、ベンチマークソフトで実際の性能も見ていきたいと思います。
チップセットの仕様は「B350」と同等?
チップセット | B450 | B350 |
---|---|---|
CPUソケット | AM4 | |
メモリー | 4スロット、64GB | |
PCI-Express Gen | 2.0 | |
PCI-Express レーン数 | 6 | |
CrossFireX対応 | 〇 | |
SLI対応 | × | |
USB3.1数 | 2 | |
USB3.0数 | 2 | |
USB2.0数 | 6 | |
SATA 6.0Gb/s最大数 | 2 | |
SATA Express最大数 | 1 | |
RAID(SATA)対応 | 〇(0/1/10) | |
RAID(NVMe)対応 | 〇(0/1/10) |
上表のようにB450とB350の仕様には変化がありません。変わったところは、以下の4つになります。
・TDP105Wを前提に設計
・AMD StoreMIに対応
・Ryzen 2000シリーズのX付きモデルとの組合せで、XFR2 Enhancedに対応
特にAMD StoreMIへの対応とXFR2 Enhancedへの対応は、非常に有意義であり、大きい変更点であると言えるでしょう。まだご存知ない方のために、どういったものかを少しだけご説明させて頂きます。既知の方は、おさらいの意味も兼ねてご一読頂ければ幸いです。
無償ソフトを使い大容量HDDをSSDで高速化!
AMD StoreMIストレージ・アクセラレーション・テクノロジー(以下、AMD StoreMI)は、AMD 300 シリーズチップセット向けに有償で提供されている「Enemotus FuzeDrive for AMD Ryzen」の派生ソフトで、低速ストレージを高速化するソフトウェアです。
AMD StoreMIでは、高速なドライブ(SSDなど)を「Fast Tier」、低速なドライブ(HDDなど)を「Slow Tier」と呼び、「Fast Tier」と「Slow Tier」を掛け合わせて低速なドライブを高速化します。
ご自宅や職場などで余らせているSSDを大容量HDDと組み合わせて高速な大容量ドライブを作成する、といった使い方が出来ます。さらに、メインメモリから最大2GBまでをキャッシュメモリとして組み込む事もできます。今回のB450ではそれが無償化されます。
OSの起動はもちろん、アプリケーションのリードタイム短縮にも繋がり、ゲーミングシーンにおいても活躍が期待できます。 また、クリエイティブなシーンにおいても、この機能は非常に有用であると言えるでしょう。
CPUに余裕があれば自動的にオーバークロック
第2世代Ryzenには、アクティブなコアが2個までという制限のあった第1世代RyzenのPrecision Boostを改善し、全コアがアクティブでも動作クロックを高くするPrecision Boost 2機能を有しています。このPrecision Boost 2を補強する機能がXFR2です。
このPrecision Boost 2を補強する機能がXFR2 Enhancedです。CPUの動作温度を細かく確認し、動作温度に余裕があるとより高クロックで動作する事を可能とします。
CPUの動作温度を細かく確認し、動作温度に余裕があるとより高クロックで動作する事を可能とします。つまり、強力なCPUクーラーでCPUの温度を下げる程、XFR2 Enhancedの効果が大きくなります。
ちなみに動作クロックを自動的に挙げるXFR2は、第2世代Ryzenのうち末尾に“X”の付くRyzen 7 2700X、Ryzen 5 2600XとAMD 400シリーズチップセットを組み合わせた場合の方が、Xの付かないRyzenよりも高い効果を得られます。CPUの動作温度を抑えられれば、それだけ余裕が生まれるので、たとえば水冷CPUクーラー&Ryzen7 2700Xという構成ならば、大いにその実力を発揮します。
さて、以上がB450チップセットでの変更点になります。さて、では実際にこういった機能が追加されたB450は、B350を使った時のPCと比べて性能に差が出るのか検証してみましょう。
今回使ったベンチマークソフトは、定番の「PCMark10」「CINEBENCH」。また、エンコードの性能テストとして「x264 FHD Benchmark」を使用しました。検証環境は以下の通りです。
検証環境 | ||
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CPU | AMD「Ryzen 7 2700X」(8コア/16スレッド、3.7〜4.3GHz) | |
グラフィックス | ASRock「PHANTOM GXR RX580 8G OC」 | |
マザーボード | ASRock「Fatal1ty B450 Gaming K4」(B450) | ASRock「Fatal1ty AB350 Gaming K4」 |
メモリー | Corsair 「CMK16GX4M2A2133C13」(2133GHz 16GB ×2) | |
ストレージ | SanDisk「SSD PLUS SDSSDA-120G-J27」(120GB SATA3) | |
電源ユニット | 玄人志向「KRPW-AK750W/88+」(750W 80PLUS SILVER) |
※CPUクーラーは純正クーラーを使用
まずは総合ベンチマークソフトのPCMark10の結果からご覧ください。Gamingを除く3項目をテストする「PCMark 10」の結果はB450の方が約2.3%上回るという、ほぼ誤差の範囲内という結果に。一方、「PCMark 10」からさらにデジタルコンテンツ作成に関係する「Digital Contents Creation」を除くテストを行なう、「PCMark10 Express」では、スコアーの差が約5.5%ほどとやや広がりました。
もしかしたら、Precision Boost 2による効率的なクロックアップが、単純作業では作用したのかもしれません。
次にCINEBENCH R15の結果です。こちらはシングルだとB450の方が、B350よりも約17%上回るスコアーをマーク。しかしながら、マルチだとB350の方が約3.2%高い数値となりました。どうも、メニーコアを上手く使えていない様子。
そこで、今度はH.264のエンコードで性能を測る「x264 FHD BenchMark」を使ってみました。そして、この検証でも約2fps、変換時間にすると約2秒とわずかな差ではありますが、やはりB350の方が良いスコアーとなりました。
B450の方が後発なので、ドライバーが成熟すれば、この数値が逆転する可能性は高いですが、性能面だけで言えば大きな差はありません。つまりは、今なら性能差は劇的に変わらないので、現状B350を使っている人や、予算を鑑みて価格が落ちているB350を購入した方がお買い得。
とはいえ、B450は先述したようにStoreMIやXFR2 Enhanced、Precision Boost 2と新機能による性能向上が見込めるので、この先長く使うならB450の方がベスト。2000シリーズの性能をフルに引き出したいという人には、間違いなくオススメできます。
ちなみに今回使用した「B450 Gaming K4」の価格は、実売約1万5000円前後、比較機として用意した同モデルの「AB350 Gaming K4」は実売約1万700円前後。約4300円の差ですが、たとえばStoreMIを使わず、大容量のSSDを選択する構成を検討した場合などを考えれば、まったく高くはない価格差でしょう。
2000シリーズでクリエイティブにもゲームにも強い、メニーコア搭載PCを作りたい!という人は、ぜひB450マザーボードの購入を検討してみてください。