最初に冷却性能に関わる部分を4つ挙げよう。ラジエータ、ヘッド内部と、ポンプ、ファンだ。まずラジエータ。ラジエータのサイズは、ヒートシンクの大きさと同じ関係にある。簡易水冷では、120/140/240/280/360といったラジエータサイズがあり、厚みにもいくつか種類がある。ヒートシンク同様、基本的に大きなラジエータほど冷却性能が高い。ThreadripperのようにTDPが100Wを超えてくると、余裕をもって240サイズ以上が望ましいだろう。厚みに関しては、今回用意した3製品でもさまざまだ。もっとも分厚いのがEnermaxのLIQTECH TR4 II。一方、ラジエータとしては一般的だが今回のなかでは薄めのものがAntecのMercury240 RGBになる。
次にヘッド内部。ここは分解できないため製品サイト上のスペックが唯一の情報源であるが、例えばEnermaxのLIQTECH TR4 IIの場合、CPUの熱を吸い上げ、冷却液に受け渡す部分で「シャント・チャンネル・テクノロジー(SCT)」を用いていると紹介している。ヘッド内部では、CPUの熱を吸いあげる金属部分に溝を設け、そこに冷却液を流し熱交換を行うが、単純に溝を彫っただけでは最初よりも最後のほうの流量が弱くなってしまうとのこと。溝の部分の途中で各溝を流れてきた冷却液を一度交えることで、最後まで十分な流量を確保しようというのがSCTの考え方だ。溝の金属部分と冷却液が接する部分で生じる「境界層」を抑えることができるとのことで、熱交換の効率が高いと説明している。
続いてポンプ。ポンプは流量、容量、耐久性の3つのポイントがある。ポンプの流量は、製品によって公開されているのも非公開のものがある。流量が多いほうが冷却では有利と言えそうだが、もう一つ容量も重要な要素。流量があって、大容量であるものが冷却性能でも有利だ。そして耐久性。簡易水冷の場合、冷却液の水流が止まってしまうのは致命的だ。負荷のかかるポンプ部分で、耐久性のある部品を採用していることが安心につながる。今回の3製品では、EnermaxのLIQTECH TR4 IIが流量を、NZXTのKRAKEN X52も流量を、Antec Mercury240 RGBは流量、容量、耐久性すべてをアピールしている。
そしてファンはラジエータを放熱する部分として冷却性能に大きく関わることに加え、静音性にも影響する。ファンは120/240/360が12cm角、140/280が14cm角で、基本的にケースファンと同じ25mm厚のものが採用される。製品選びのポイントとしては、回転数(rpm)、風量(CFM)、風圧(mm-H2O)といったところと、ノイズレベル(dB)だ。このあたりはそれぞれが相関関係にあって、なかなかどれがベストとは断言しづらい。例えば回転数では、昨今、PWMに対応する製品が主流で、最小と最大の回転数が記載されるが、CPUを定格で運用する限りでは回転数制御が効いて最大回転に達しないことが多い。制御が入らないPCの起動の瞬間などで最大回転になるものもあるが、その一瞬を我慢すればよいだけだ。そして、240サイズの製品で回転数制御が効くと、ベンチマークのような負荷をかけてもあまりうるさい製品はない。今回も製品マニュアルどおり組み立て、必要なものにはソフトウェアを導入し回転数制御を効かせると、どれも30dB台半ばとなって、静かな図書館とさほど変わらない音量で落ち着いていた。その上で、冷却性能についても危険域には達していない。つまり基本的に製品化し、サポートが保証されているだけあって、運用に問題はない。その上で異なるのは、マージンということになる。