自社工場保有から一転
工場を持たない方針に転換
2008年はもう2つ、大きな出来事があった。まずはHector Ruiz氏の退任で、後継はK7の設計を率いていたDirk Meyer氏がCEOに就任する。
もう1つの大きな出来事はファブレス企業への移行である。もともとAMDは自社ファブ(工場)での製造に非常にこだわっていた。何しろ創業者であるJerry Sanders氏の“Real men have a fab”(真の男ならファブを保有する)は非常に有名である。
実際1996年にAMDがNexGenを買収した時、当時NexGenのCEOを務めていたAtiq Raza氏は当初AMDのCOOに就任している。時期はおりしもFab 25が操業を完成し、そしてFab 30の建設に着手していた時期であるが、Raza氏はそもそもがファブレス企業のCEOということもあり、Fab 30の建設に反対。これで当時CEOだったSanders氏と対立、COOを辞任することになったという経緯もある。
余談ながら辞任したRaza氏が設立したのがRaza Microelectronicsで、2006年にAlchemy部門を買収したメーカーでもある。なんというかいろいろ結び付いている感じだ。
そんなわけでAMDがファブを保有するのが当たり前だと考えられていたが、アブダビの投資機関であるATIC(Advanced Technology Investment Company)の投資を受ける形で、まず2008年中にAMDのファブ部門がThe Foundry Companyとして分社化。次いでATICは2009年にシンガポールのChartered Semiconductorも買収。The Foundry Companyと併せてGlobalFoundriesを設立する。
もともとChartered Semiconductorは以前からAMDのプロセッサーやチップセットの製造を委託されており、その意味では技術的にも親和性は高かったと言える。これによりGlobalFoundriesはTSMCに続く世界第2位の規模のファウンドリとなった(この当時、まだSamsungは自社製品の製造がメインでファウンドリサービスの比率は少なかった)。
Intelと和解
2009年もAMDにとって悪い年ではなかった。2009年11月2日、AMDとIntelは独禁法違反訴訟に関して全面的に和解。IntelはAMDに対し12億5000万ドルの和解金を支払ったほか、両社間のクロスライセンス契約の延長も行なわれ、さらに他の製造業者(要するにGlobalFoundriesだ)への製造委託なども可能になった。
これにともない、日本を含む各国での訴訟も全面的に取り下げとなった。また細かいところでは、旧ATI TechnologiesでImageonというブランドで開発されてきた組み込み機器向けGPUをQualcommに売却している。このImageonは、現在QualcommでAdrenoという名前で引き続き最新のモバイル向けSoCに搭載され続けている。
製品ラインナップで言えば、まずCPUはローエンド向けにクワッドコアとなるAthlon II X4が投入されている。またGPUでは世界初のDirectX 11対応製品であるRadeon HD 5000シリーズがやはり2009年に投入されている。
画像の出典は、AMD