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Ryzenの投入で市場に強烈なインパクトを与える

AMD50年史 起業から現在までの功績を振り返る(後編)(6/6)

大原雄介 編集●AMD HEROS編集部

Ryzenシリーズを市場に投入
市場に強烈なインパクトを与える

2017年、満を持して投入されたのがZenコア第1世代のRyzen 7/5/3である。Intelも14nmへの移行で非常に苦しみ、14nmに移行したのは当初の2年遅れの2015年だったこともあり、Skylake世代のCore iシリーズと遜色ない性能を、より安価に利用できるとあって、それまで0に近かった同社のコンシューマー向けCPUのシェアは急速に高まり始める。

満を持して投入されたRyzen 7/5/3。性能もさることながら、コンシューマー市場に8コアを持ち込んだ流れは大きかった

満を持して投入されたRyzen 7/5/3。性能もさることながら、コンシューマー市場に8コアを持ち込んだ流れは大きかった

画像の出典は、AMD

8月には、そのZenコアを2つ搭載する、16コア/32スレッド構成のHEDT(High End Desktop)向けCPUであるRyzen Threadripperも投入された。

独特のCPUパッケージも人気を博したRyzen Threadripper

独特のCPUパッケージも人気を博したRyzen Threadripper

画像の出典は、AMD

また同年そのZenコアを採用したサーバー向けのEPYCプロセッサーも発表。コンシューマー向けと異なり急にシェアが増えたりはしないものの、多くの顧客が関心を持つことになった。

Zenコア採用のサーバー向けプロセッサーEPYC。サーバーの場合は動作検証などに時間を要するので、新製品を投入しても実際にそれが顧客に納入される前にある程度のテスト期間が必要になる。とは言え、そうした検証用に少数のEPYCサーバを購入するという顧客が2017年中にいくつも現れた

Zenコア採用のサーバー向けプロセッサーEPYC。サーバーの場合は動作検証などに時間を要するので、新製品を投入しても実際にそれが顧客に納入される前にある程度のテスト期間が必要になる。とは言え、そうした検証用に少数のEPYCサーバを購入するという顧客が2017年中にいくつも現れた

画像の出典は、AMD

またこの年にはRadeon RX Vegaも発表、Radeon RX 4xxシリーズの上位製品として投入されることになった。このVegaコアをそのまま利用したのが、機械学習向けのRadeon Vega Frontier Editionである。

Radeon Vega Frontier Edition。機械学習向けに半精度(FP16)をサポートし、25TFlopsの処理性能を発揮した

Radeon Vega Frontier Edition。機械学習向けに半精度(FP16)をサポートし、25TFlopsの処理性能を発揮した

画像の出典は、AMD

なおこの2017年、AMDはミリ波ワイヤレスの技術を持つNiteroを買収している。これはAR/VR向けヘッドセットを構築するためのものと考えられている。

2018年も勢いは止まらなかった。まずCPUでは、Vega GPUを統合したRyzen Gシリーズが発売された。これによってモバイル向けや低価格PC向けにもRyzenが入れるようになり、実際入っていく。

その一方で、プロセスをGlobalfoundriesの12nmに移行した第2世代Ryzenも追加で発売、さらにこれを利用した第2世代Threadripperも発表される。残念ながらGPUに関しては少し先送りで、既存のPolarisベースのRadeon RX 400のアップデート版がRadeon RX 500シリーズでいくつか投入されるにとどまった。

そして2019年、まず年明けにいきなりTSMCの7nmプロセスで製造された7nm Vegaコアを使ったコンシューマー向けGPUであるRadeon VIIを発表。

7nm Vegaコア。このダイそのものは2018年のCOMPUTEXで公開された

7nm Vegaコア。このダイそのものは2018年のCOMPUTEXで公開された

画像の出典は、AMD

Radeon Instinct MI60。処理性能6.7TFlops(FP64)、メモリー32GB、PCIe Gen4対応といった、業界初の特徴を詰め込んだ製品

Radeon Instinct MI60。処理性能6.7TFlops(FP64)、メモリー32GB、PCIe Gen4対応といった、業界初の特徴を詰め込んだ製品

画像の出典は、AMD

さらに同じくTSMCの7nmを利用するZenコアを搭載した第3世代のRyzenが公開されている。これに先立ち2018年11月にはその7nm Zenコアを搭載する第2世代EPYCも披露されており、どちらも今年中に発売開始される予定だ。

そんなわけで50年を駆け足で紹介してきた。AMDはこの50年に2回の危機を迎えている。1つは1987年から始まるIntelとの訴訟、もう1つが2011年から始まった、CPU/GPUの急速なシェア喪失である。AMDはこの2回の危機をどちらも乗り切って、無事に50周年を力強く迎えられた。そのことを素直に称賛したい。

AMD年表
年度 年数 CEO トピック 主要な製品(旧AMD) 主要な製品(旧ATI)
1969 0 Jerry Sanders 創業 Am9300
1970 1 Am2501
1971 2 Am2505、Am3101(Bipolar DRAM)
1972 3 株式上場
1973 4 IntelとMOSデバイスのセカンドソース契約
1974 5
1975 6 Am9080、Am2900、Am9102(SRAM)
1976 7 Intelと10年のクロスライセンス締結
1977 8 シーメンスとJV、Zilog Z8000のセカンドソース取得
1978 9 Zilogとクロスライセンス契約
1979 10
1980 11 TDC(Technical Design Center)開設
1981 12 Intelと技術提携契約締結
1982 13 Intelとセカンドソース契約締結
8086/8088/80186/80188の生産開始
Fab 1を閉鎖
Am29116(16bit MPU)
1983 14 Am7990(LAN)
1984 15 Am286
Am27C512(512Kbit EPROM)
Am9580(Disk Controller)
1985 16 ATI Technologies創業
1986 17 DRAMマーケットから撤退
初のレイオフを敢行
Am29000(32bit RISC MPU)
Am27C1024(1Mbit EPROM)
1987 18 Monolithic Memories, Inc.を買収
Intelがマイクロコード使用に関する
特許侵害でAMDを提訴
Am7910/7911 FSK Modem EGA Wonder/VIP
1988 19 Intelが286の特許侵害でAMDを提訴 VGA Wonder
1989 20
1990 21 Am386 Mach 8
1991 22 IntelがAm386を著作権侵害で提訴 Am486SX
1992 23 1987年の訴訟に関して結審
Am386の製造・販売を認める裁定
ただしAm486のマイクロコードの権利を認めず、Am486出荷延期
Am486DX Mach 32
1993 24
1994 25 マイクロコードに関し、AMDの利用を認める逆転判決。
Am486を出荷開始
Mach64
1995 26 Fab 25が操業開始 Am5x86/AMD K5
1996 27 NexGen買収 Elan SC300/SC310 3D Rage II
1997 28 K6、Elan SC400/SC410
1998 29 PLD部門をVantis Corp.に分社化 K6-2 Rage 128
1999 30 K6-III、Athlon(Slot A)、Elan SC520
2000 31 Fab 30が操業開始 Athlon(Socket A)、Duron Radeon 256
2001 32 Athlon XP(Palomino) Radeon 8500
2002 33 Hector Ruiz Alchemy Semiconductor買収 Athlon XP(Throughbred) Radeon 9700
2003 34 Flash Memory部門売却(Spansion)
National SemiconductorのGeode部門買収
Athlon XP(Barton)、Athlon 64、Opteron Radeon 9800
2004 35 AMDがIntelを独禁法違反で提訴 Sempron Radeon X800/X850
2005 36 Athlon 64 X2、Athlon 64 FX、Geode LX800 Radeon X1800
2006 37 ATI Technologies買収
Alchemy部門をRaza Microelectronicsに売却
Geode部門閉鎖
Fab 36操業開始/Fab 30がFab 38に改編
Radeon X1900/X1950
2007 38 Vantis Corp.をLatticeに売却 Phenom X4/X3 Radeon HD 2000シリーズ
Radeon HD 3000シリーズ
2008 39 Dirk Meyer 製造部門をATICに売却
DTV部門を資産ごとBroadcomに売却
Phenom II Radeon HD 4000シリーズ
2009 40 モバイル向け資産をQualcommに売却
AMDとIntelが全面和解
Athlon II Radeon HD 5000シリーズ
2010 41 Phenom II X6 Radeon HD 6000シリーズ
2011 42 Rory Read AMD FX(Bulldozer)、AMD APU(Llano) Radeon HD 7000シリーズ
2012 43 SeaMicroを買収 AMD FX(Piledriver)、AMD APU(Trinity)
2013 44 PlayStation4発売
Xbox One発売
AMD APU(Richland) Radeon HD 8000シリーズ
Radeon R7/R9 200シリーズ
2014 45 Lisa Su AMD APU(Kaveri) Radeon R7/R9 300シリーズ
2015 46 AMD APU(Godavari) Radeon R9 Fury/Nano
2016 47 Radeon RX 400シリーズ
2017 48 Niteroを買収 Ryzen、EPYC Radeon RX 500シリーズ
Radeon RX Vega 64/56
2018 49 2nd gen. Ryzen、Ryzen G Radeon RX 500シリーズ
2019 50 Radeon VII

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