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●Ryzen 7 3800XのCPU占有率
8C/16TのRyzen 7 3800Xではx264 fast設定ですでにCPUは全コアほぼ100%になるため、エンコードスキップが出てしまうのも頷ける。注目したいのはx264 mediumにするとCPU占有率が逆に下がるが、これはエンコード処理が間に合わなくなりすぎて処理が間引かれているからだ。
●Ryzen 9 3900Xの占有率
12C/24TのRyzen 9 3900Xでは、x264 fast設定でエンコードスキップをほとんど出さずに処理を終えたが、CPUは全コアフル稼働状態。x264 mediumにするとスキップが11%出てしまったものの、CPUをフル稼働させてなんとか食らいついている。
先のベンチマークでRyzen 7 3800Xよりも3900Xの方がフレームレートが低かったのは、コア数の少ない3800Xはエンコード処理のスキップが多発したぶんCPUパワーが描画へ多く振り分けられ、逆にスキップの割合が低かった3900Xはエンコード処理に手をとられてフレームレートを落とした、と考えることができる。
●Ryzen 9 3950Xの占有率
16C/32Tともなると、x264エンコーダーがコアを使い切れない傾向がタスクマネージャーに現れてくる。x264 fast設定ではSMTで増えた論理コアを中心に負荷が大きく下がっている。x264 slowにすると激しくエンコードスキップが発生するが、このときのCPU占有率グラフはくし形になる。エンコードスキップが多すぎてCPUが処理を諦めているといった感じだ。
●Ryzen Threadripper 3970Xの占有率
x264エンコーダーは14〜16コアに割り振るのが限界で、それ以上コアがあっても使い切れてないことがよく分かる。x264 fastよりもmediumの方がCPU占有率が高めだが、slowにすると逆に低くなるのは、Ryzen 9 3950Xと同じ理由だろう。
ちなみに、エンコードスキップが発生するのはBorderlands 3とOBS Studioの処理が同じコアに被るからではと予想し、タスクマネージャーの関係の設定(Processor Affinity)で重ならないようコアを制限しても、スキップ率に大きな変化はなかった(多少減ってもスキップ率がゼロにならなければ意味がない)。
●Ryzen Threadripper 3990Xの占有率
Ryzen Threadripper 3990Xは、CPUのコア数が3970Xの倍になったものの、処理に割り振られるコア数は限定されてしまうため、CPU全体としてはx264 slow設定にしても負荷は低め。x264 slow設定時のRyzen Threadripper 3990Xのスキップ率は2割台と3970Xのスキップ率よりも低く抑えられ、エンコード作業を頑張っているため、CPUの負荷は3970Xよりも高くなっている。
まとめ:64C128Tは活かしきれない状況だが、
超メニーコアCPUの凄さの一端を垣間見た
以上で検証は終了だ。3DMarkで正しく評価されていないRyzen Threadripperだが、実ゲームではRyzenの8コアや16コアモデルに対し強烈に劣っている訳ではないことを示した。ただ導入コストを考えると圧倒的にRyzenの方が安く上がるため、ゲームを遊ぶことを中心にした場合、Ryzenの優秀さに疑問の余地はない。
しかし、ストリーミングをしつつさらに高画質でエンコードをかけるという状況では第3世代Ryzen Threadripperの粘り強さが見えてきた。今回はストリーミングに9Mbps/録画に50Mbpsという設定で挑んだが、Ryzen 9 3900XではCPUエンコードに若干力が足りず、3950Xでなんとか見られるものになる、といった感じだ。
その点で言うとRyzen Threadripper 3970Xではx264 medium設定でもエンコードスキップのない安定した処理が可能であった点は、さすがHEDT向けCPUといったところだ。残念なことにRyzen Threadripper 3990Xと3970Xだとどちらもx264 slow設定ではエンコードスキップが激しく出てしまった。128スレッドのキャパシティーがあっても、肝心のエンコーダーが使い切れない。
Ryzen Threadripper 3990Xは究極のゲームストリーミング環境ではない、ということになるが、エンコードスキップの比率で見ると3970Xより格段に低くなっており、フラッグシップモデルの意地を見せたという感じがする。
次回はプロセッサーグループによる制約の存在しないLinux環境でThreadripper 3990Xはどのようなパフォーマンスを見せるか検証してみたい。