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高クロック動作、太いメモリーバス幅が特徴だが、CU数は最大1.2倍
RX 7900 XTX/ RX 7900 XTの技術的ハイライトに関しては11月初頭の発表時レポートおよび続報、さらに大原氏によるさらに詳細解説で解説済みであるため、ここでは概要をおさらいするだけにとどめたい。
RX 7900 XTX/ RX 7900 XTで採用されたRDNA 3アーキテクチャーは、GPUコアとInfinity Cache+メモリーコントローラーを別のプロセスで製造することで、ライバルであるRTX 40シリーズよりも安価で高性能なGPUを出すことを志向した技術だ。
RDNA 2は大容量のInfinity Cacheで比較的細い(最大256bit)メモリーバスの弱点を補いつつ、省電力化を狙っていたが、RDNA 3では第2世代Infinity CacheとInfinity Fanout Linkという接続技術を用いることで、従来よりも少ないInfinity Cacheでもより高い実効メモリー帯域を確保できる。Radeon RX 6950 XT(RX 6950 XT)の実効メモリー帯域が1.8TB/secなのに対し、RX 7900 XTXでは3.5TB/sec、RX 7900 XTでは2.9TB/sec(それぞれ理論上の最大値)まで到達する。
RDNA 3アーキテクチャーでは、Compute Unitの構成も大きく変化した。最大の変化はAI(行列演算)処理に特化した“AI MATRIX Accelerator(AMA)”の搭載だが、現時点ではまだ具体的な使い方は提示されていない。筆者の想像にすぎないが、RDNA 3世代の家庭用ゲーム機での利用も視野に入れ、使い道を模索している段階なのだろう。
もっと直接性能に関係する部分では、L0〜L2キャッシュの増大と、CUそのものの演算性能の倍増が挙げられる。この辺の解説は大原氏に任せるが、ざっくり言えば同時に実行する命令を2倍に増やすことのできる改善である。CU1基のクロック当たり演算効率は前世代比17.4%向上しているので、CU数が多くなるほど効率向上率の恩恵が受けられる。
ただCU数はRX 6950 XTから20%もしくは5%の小幅な増加にとどまる。RDNA 3で盛り込まれた要素を上手く使えないような状況下では、パフォーマンスの伸びはそれほど大きくないことも十分予想される。
こうした要素を集約した結果、RDNA 3アーキテクチャーは従来よりもワットパフォーマンスが最大54%も向上するという。RX 7900 XTXのTBP(Total Board Power)は355W、RX 7900 XTは315W(当初発表の300Wから引き上げられた)であるが、前世代のフラッグシップRX 6950 XTは335W、仮想敵であるRTX 4080は320W設定である。
4K/8K志向のハイエンドGPUであるためそれなりに消費電力は高いが、前世代やライバルに対し高フレームレートが出せるということを示唆している。
そのほかの注目の機能は、Radeon Media EngineにAV1コーデックのハードウェアエンコーダーが組み込まれたこと。既存のAV1ハードウェアエンコーダーにない独自機能として、映像中の文字や人物の顔の画質を向上させるというものがあるため、ゲームの録画だけでなくビデオ会議等にもメリットがある。
このAV1エンコーダーを利用するにはアプリの対応が必要だが、「OBS Studio」の最新ベータ版(29.0 Beta 2)ではRX 7900 XTX/RX 7900 XTに搭載されたAV1ハードウェアエンコーダーを利用できる。ただフルに機能を引き出すには、さまざまなオプションを入力する必要があるため、使い始めるハードルはやや高い。いずれOBS StudioのUIに取りこまれていけば、もっと使いやすくなるだろう。